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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
「でも非常に残念なんですけど、顔もエプロンもべとべとにされては料理ができません」
「あっ……、そ、そうだね。ごめん……」
「……ご飯食べてからなら、いいよ。気に入ったんならポニーにする。エプロンは……、うんまあ、ベッドの上でもしろと言うならする」

 話しているあいだも、左手は徹を握りっぱなしだったが、手の中に脈動を感じていると紅美子のほうも我慢が出来なくなってきて、

「ご飯食べたら、ぜひ征服して。……今は、これで」

 再び、徹を頬張った。首も膝も使い、頭を上下させる。彼がしてくれるようになった、バストや下腹部への愛撫にも劣らぬ性感が、口内にも感じられた。頭を下げるごとに漏れる鼻声すら悦んでくれるらしく、貪婪を嗤われることなく、軽蔑されることもなく、彼の声帯は喘いでいてその暇がないにしろ、肉胴から伝わってくる体温と振動が、愉悦のほどを五感でわかる形で教えてくれていた。

「ンッ……」

 舌の上で、肉茎が暴れ始めた。紅美子は唇でしっかりと胴回りを縛り、一滴たりとも外に漏らさないようにして、彼がすべて射出してくれるまで待った。収束すると、いま一度肺を膨らませて尿道に残ったものも吸い取り、一呑みで喉を通す。

「……仕事」
「え……」

 嚥下後の絡みつく第一声は徹を惑わせたが、

「だから、仕事っ。それ、しまって」

 夥しく射精したにもかかわらず、まだ肉茎の角度は平行を上回っていた。紅美子は未練を振り切るように、すっくと立ち上がって束ねた髪を後ろに振ると、エプロンの中でズレ上がっていたミニの裾を引いた。徹もまた未練たっぷりだったが、紅美子に急かされて、下着とデニムを上げて下衣を整える。

「……これやばいなー。徹が家で仕事するときは考えよ。ムラムラさせちゃいけないから、幻滅するようなカッコでいなきゃ。ヨッレヨレのスウェットに、ぼっさぼさの髪で。もちろんドスッピン」

 まだ、舌根には彼の味が残っていたが、物足りなさと照れを誤魔化すように、シンクで手を洗い始めて言うと、
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