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爛れる月面
第1章 違う空を見ている
「コンプライアンスかい? 言っちゃなんだが、この規模の会社にしては、なかなか徹底してるね」
「申し訳ありません」
「……僕の立場でこんなこと言ったら怒られるが」
 紅美子のほうへ向き直り、「バレなきゃコンプラ違反じゃないね」

 バレるバレないの問題ではない。こんな軽い誘いに乗るような自分ではないし、こんな軽い扱いを受けてしまったじたいが呪わしく、腹立たしかった。もういい、あとから社長に激怒されようが、派遣元にクレームを入れられようが、せっかく徹に和まされていたのにもかかわらず、気分を台無しにしてくれことを贖ってもらわなければならない。

「だいたい私──」

 口調も声調も忘れ、こっぴどくねじ伏せてやろうと思った矢先、井上が内ポケットから携帯を取り出した。

「まとまったのか? ……うん、……、……ああ、こっちはこれからだ。……わかった」

 仕事の電話っぽい。むしろお互いにとって、平穏無事のまま別れるチャンスだ、と、回れ右をして歩を踏み出したところで、

「おい、君──」

 またしても、呼び止められる。

 しつこい。
 あと、君、君、うるさい。

 ラッキーチャンスを棒に振るつもりなら、完膚なきまでに叩きのめしてやる。

 紅美子は髪を揺らして振り返り、左手をさっと顔の横に上げ、

「私、婚約してるんですけど? だから──」
「いや、すまなかった。時間稼ぎだったんだ」

 井上は携帯をジャケットにしまいつつ、

「商談が終わって、早田は昔話がしたくって、君が居るはずの部屋に行った。だが、君は不在だった。代わりに可愛らしい同僚が居て、早田は一目見て気に入ってしまった」
「……」

 あの野郎。

 中学の時の光景が甦る。早田が積極的にアプローチしていたのは……、小さくて可愛らしいタイプ。大人になっても変わっていなかったらしい。

「我々は今日はもう仕事はない。飲みに行こうかと思っていたが、男二人ではつまらない。これまで行動を共にしてきて判明していることだが、早田は女の子がいないと楽しく飲めない体質のようだ」
 と井上は続け、一人で笑った。「本当は、君を飲みに誘うつもりだったようだけどね。奴の名誉のために言っておいてやると、懐かしんでたのは確かだ。で、今報告があった。あの子は、君が一緒なら来てくれるらしい。奴は名前の通り、話をまとめるのが早い」
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