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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
 細かく足踏みをして手袋を外し、両手を擦ってから耳を塞ぐ。すると徹が買い物袋を置き、紅美子の手をどかせ、自分の手で温めてくれた。靴脱ぎ場に立っていた紅美子からは徹は少し高いところにいて、抱きついてみると、ちょうどセーターの胸に顔をくっつけることができた。

「……そこのキレイな奥さん、やっすいよー、って言われちゃった」
「それは当然だよ。ここにはクミちゃんみたいなキレイな人、いないから」
「怒られるよ、栃木の人に」
 あまりサボらせてはいけない、と、いつまでも暖を取っていたい誘惑を振り切って、「まだ、かかりそう?」

 肩を借りてロングブーツのサイドジッパーを下ろしつつ問うと、徹は普段あまり見せない渋い顔をした。

「だいたい、できてるんだけど……、詳しく突っ込まれると説明しきれないところがあるかも」

 そう言うからには、難航しているのだろう。紅美子は玄関に上がり、買い物袋を持つ前に徹に回れ右をさせ、

「じゃ、ゴハンはまだまだですから、頑張って。難しいことは私にはわかんないけど、ゴハンを作ることはできる」
「だって、せっかくクミちゃんが来てるのに……」
「言ったでしょ? 私、徹の仕事の邪魔者にはなりたくないの。こういうことです」

 荷物を台所に置き、カウチソファにコートをかけ、その下に着ていた白いセーターを腕まくりする。

「あ、台所の引き出しのところに、エプロン入ってる。このあいだ買っておいたんだ」
「……でっかいハートのやつだったら、腰抜かすよ?」

 確かに白の服での水仕事は不安だったので、シンク下の引き出しを開けてみると、水色のドット柄のエプロンが入っていた。一度洗ってくれているらしく、硬さが取れている。広げてみれば、フリルのAラインが可愛らし過ぎるようにも思えたが、

「ま、徹にしては趣味いいじゃん」

 と合格点を出し、部屋の隅の棚の小さなクリアケースから、栃木に度々来るようになって置いてあるヘアゴムを摘み取った。
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