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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
 受話器から聞こえる息が早まる。下腹の指は止めていた。嗚咽を漏らしそうになって身を引き締めると、狭間からまた、肌に灼きつく酸液のような汁が流れ出てくる。

「うっ……、ク、クミちゃん……、もう、で、出そう……」
「うん、出して」
「クミちゃんも、いっ、一緒に……、クミちゃん……、う、あ……、ああっ!」

 今にも呼吸が止まりそうな息が断続的に聞こえ、しばらく待っていると、切ない溜息で静かになった。最中、虚ろな声で、何度も名が呼ばれていた。

「……出た?」
「う、うん。クミ、ちゃんも……?」
「うん。気持ち、よかった」
「俺も、すごい気持ちよかった」
「でもね、その……、いっぱい汚しちゃったから、あとかたづけ、しなきゃ」
「……俺もだ」

 徹の照れた息笑いに、横隔膜が激しく蠕動し、

「徹、……っ、……まだ、私のこと、好き……?」
「まだって? ずっと大好きだよ」
「ごめんね、変な電話して。……っ、嫌わないで」
「変じゃないし、嫌いになんか絶対にならない。うれしかったよ」
「うん……、じゃ、おや、っ、すみ……」
「うん、おやすみ」

 通話が切れるや否や、

「……なんてことさせんのよっ!!」

 股に置いていた手を拳にして井上の二の腕を殴った。

「徹くんはとんでもない早漏だな。そんなことで大丈夫なのか?」
「うるさいっ! あんたなんかに、徹のこと何も言わせないっ!」
「君も君だ。最初は嘘がうまくなったな、と感心したが、最後の芝居は最悪だ。徹くんじゃきゃ気づいてる」
「……っ! 最悪なのは、あんたよっ」
「イッてないのに、イッたことにしたのは誰だ?」
「うっ……」

 井上がのしかかってくる。脚が割られ、焔柱ような肉茎が媚門に押し当てられる。

「それによく『挿れてほしい』なんて言えたな」
「っく……、ほんとに、そう思ったんだもん。と、徹に、してほしいって……」
「こんな中に挿れさせようっていうのか?」
「んんっ……!!」
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