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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
「声聞きたくて……、いま、聞いた、から……、……濡れ、てる」
「うん……」
「ごめんね、突然。……お願い、引かないで」
「引かないよ。すごく、うれしい」
「したいの……」自ら花を開き、散々弄ばれたにもかかわらず、蕊先を指腹でこすっただけで腰が上がり、「んっ……、と、徹も一緒にして。お願い……」
「うん……」

 衣の擦れる音が聞こえてきて、やがて、荒息が聴こえ始めた。

「……してる?」
「うん……」
「私で、ちゃんと、してくれてる……?」
「うん、……も、もちろん、だよ」
「と、徹……、んぁっ……!」

 嬌声が漏れたのは、本当に通話をしているのなら塞がっているはずの左手も、井上によって股ぐらに遣わされたからだった。弄っていた右手は補助に回り、肉花を開花させる。剥き出しになった種実を、花弁ごと利き手でなぞらされる。

「クミちゃん……、声、……すごく可愛いよ」
「徹……、すごく、して、欲しい」
「俺も、だよ……ク、クミちゃんと、したい」
「……軽蔑、してない……?」
「うん。今すぐ抱きしめたい」

 抱きしめられるときを想像したら、蜜洞が激しく収縮した。

「ああっ、徹っ……、徹、に……い、挿れてほ──」

(……!)

 が、次の瞬間、ドロリとした生温かく不気味な粘液が左手を濡らした。薬指の根元にも流れ込む。傍らにいる、彼の知らない男から、注がれたばかりの裏切りの証だ。腰が冷たくなり、あろうことか尿口から雫か数滴漏れた。いよいよ脳髄が溶け、彼と一緒に果ておおせる寸前だったのに、駒を裏返したかのような暗澹が紅美子を覆った。

 歯を食いしばり、涙膜で世界を揺らし、

「ね、徹、……いきそう」
「クミちゃん、俺も……」
「徹も出る? じゃ、一緒に……」
「うん」
「出すとき、教えてね」
「うん」
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