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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない

「まさか、私のせいなんて言わないでね?」
「言わねえよ」
早田は頭を掻き、「長谷は関係ない。……今の仕事、実力主義ってのはいいんだけどさ、でも、もう疲れちまった。自分が成果上げるために、何人露頭に迷わせたかわかんねえよ。こんなつもりで、世界レベルのデッカい会社に入ったわけじゃないんだけどなぁ……」
「きっと考えすぎ。よくわかんないけど、大抵はあんたのせいじゃないよ」
「お前、さっき罪悪感つったけど、当たってるよ。きっと俺、お前に許してもらって、少しでも気を軽くしたかったんだよ。ムシがいい話だ」
「私のは、あんたは悪くないって言ったじゃん」
「だからさ」
早田は紅美子へ真摯な表情を向けた。
「笹倉は、壊さないでやってくれよ。あんなマジメで、純粋で、イイ奴がさ、裏切られるなんてあってほしくないんだ。俺の勝手な願望だけど」
「おぼえとく。話はそれだけ? 行くね」
早田を見ていられなくて、紅美子は歩み出そうとしたが、
「あともう一つだけ」
と、立ち止まらされた。
「マネージャ……井上さん、もうすぐ失脚すると思う」
「……」
「あの人、東洋ゼネラル・マネージャー、っていうの狙ってたんだ。だから躍起になって色んな企業買収してた。でも日本ではうまくやってるけど、中国では連続でコケてる。あっちは日本より難しいんだ、いろいろと」
「……。ふぅん、アイツが破滅するとこ見られるんだ。嬉しい」
「井上さんは、お前にかなりイレこんでる」
早田の声が、寒さなのか、これから話すことに対してなのか、少し震えた。
「遊びの女を巻き込むような人じゃない。だけどあの人の浮気話、今まで何回も聞いたことあるけど、お前のことを話す時だけは全然違う。距離を置いたほうがいい」
「ちなみにさ」
「言わねえよ」
早田は頭を掻き、「長谷は関係ない。……今の仕事、実力主義ってのはいいんだけどさ、でも、もう疲れちまった。自分が成果上げるために、何人露頭に迷わせたかわかんねえよ。こんなつもりで、世界レベルのデッカい会社に入ったわけじゃないんだけどなぁ……」
「きっと考えすぎ。よくわかんないけど、大抵はあんたのせいじゃないよ」
「お前、さっき罪悪感つったけど、当たってるよ。きっと俺、お前に許してもらって、少しでも気を軽くしたかったんだよ。ムシがいい話だ」
「私のは、あんたは悪くないって言ったじゃん」
「だからさ」
早田は紅美子へ真摯な表情を向けた。
「笹倉は、壊さないでやってくれよ。あんなマジメで、純粋で、イイ奴がさ、裏切られるなんてあってほしくないんだ。俺の勝手な願望だけど」
「おぼえとく。話はそれだけ? 行くね」
早田を見ていられなくて、紅美子は歩み出そうとしたが、
「あともう一つだけ」
と、立ち止まらされた。
「マネージャ……井上さん、もうすぐ失脚すると思う」
「……」
「あの人、東洋ゼネラル・マネージャー、っていうの狙ってたんだ。だから躍起になって色んな企業買収してた。でも日本ではうまくやってるけど、中国では連続でコケてる。あっちは日本より難しいんだ、いろいろと」
「……。ふぅん、アイツが破滅するとこ見られるんだ。嬉しい」
「井上さんは、お前にかなりイレこんでる」
早田の声が、寒さなのか、これから話すことに対してなのか、少し震えた。
「遊びの女を巻き込むような人じゃない。だけどあの人の浮気話、今まで何回も聞いたことあるけど、お前のことを話す時だけは全然違う。距離を置いたほうがいい」
「ちなみにさ」

