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爛れる月面
第3章 広がる沙漠
「す、すごく……、キレイだよ、クミちゃん」
「それだけ?」
「うぅっ……、だ、大好きなんだ。クミちゃんのことが……」
「それだけ、なの?」
「っく! ……さ、触りたい、よ、クミちゃん……、触りたい」
「ね、徹」

 紅美子はもう半歩進み、ずいぶん腰を落としてしまった徹の脚の間に立った。

「自分のオンナなんだから、触りたいなら、なんで無理にでも触らないの?」
「だっ、だって、クミちゃんに、そんなことできないよ」
「だから私のカラダ、変わっちゃったのが、わかんないんだよ」
「ううんっ、そんな、ぜんぜん変わらないよ、ずっとキレ……」
「変わったの」
 彼の手首を取り、ショーツの左右に当てる。「……最後はちゃんと、徹が脱がして」

 下着が引き下ろされ始める。ヘアが覗き、付け根より下がると、遅れて柔丘の下領から剝がされたクロッチに糸が引かれた。膝まで下ろされても、間近に臨む徹から隠すことなく、紅美子はしっかりとパンプスを踏んで、膝をついた彼が足首まで下ろし切るのを待った。

「……ね。すっごい、ヤラしくなった。徹と、会えなかったから」
「クミ、ちゃん……」
「こんな私、やだ?」
「クミちゃんっ!」

 立ち上がった徹に抱きしめられる。萎るヘアに肉茎の裏が触れ、噴き上がる粘液が鳩尾にまで届く。ショーツの汚れ痕は浅草駅からここに来るまでの間にすっかり隠匿され、それ自体がもう、紅美子の足に蹴られて彼の目の届かないところへと除けられていた。

「ね、徹。お願い……」
 もう、鼻を啜っても、瞼を閉じてもよかった。「嫌いにならないで」

 陽に干された柔らかな匂いのするシャツを吐息で濡らし、鼻声で徹に頼んだ。

「ならないよ。なるわけない」
「……ほんと?」
「うれしいよ、クミちゃん。……おかしくなりそうなほど、うれしい」
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