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爛れる月面
第3章 広がる沙漠

だが井上は、前を向いたまま続けた。
「親兄弟や子供とセックスをしたって、受精すれば子供ができるし、順調ならば産まれてもくる。生物としての機能はまったく制限されていない。それを気持ち悪い、と思うのは、あくまでも精神……心の中での話だ。僕と君だって親子の年齢差なのに、あれだけヤれた。血の繋がりがないからな」
紅美子は井上の言葉につられ、落ちたがる瞼を開き、改めて横顔を眺めた。言ったとおり、父親でもおかしくない年齢だ。もし、この男と血が繋がっていたならば、あんなに抱かれなかったのだろうか。井上だって、丸の内のホテルで、襲い掛かっては来なかったのだろうか。もし本当の娘なら、それは当たり前だ。だが、その当たり前が通じない事例が、世の中にはある。そしてそういった話を聞けば、女として憤ろしく思うし、気持ち悪くも思う。
「……でも血が濃いと、健康な子供生まれてこないって言うじゃん」
「それはあくまでも結果だ。社会全体でタブー視する理由にはならない」
「中には本能的に嫌がる女がいるんでしょ、私みたいに」
「今はもちろん、昔も、そして国や文化を問わず、ほとんどの人間社会では近親相姦はタブーだ。地球の端と端で全く交流がなくてもな。まさに時空を超えている」
「歴史? 地理? どっちでもいいや。詳しいんだね。……知らないし、どうでもいい」
紅美子が話を終えようとすると、
「君と徹くんは、それだ」
と、井上が淡々と言った。
紅美子は挫けそうな瞼を宥め、
「ボケた? 私と徹は血なんか繋がってないよ」
「繋がってるようなものさ」井上はS字に入っても速度を緩めず、左右に大きくカーブを切りながら、「五歳から一緒にいるんだろ? まあ、そういうカップルは、探せば何組もいるんだろうけどね。しかし、話を聞いてる限り、徹くんの君への愛情は異常だ。男と女のものじゃない」
合流のために少しの間を置き、
「親兄弟や子供とセックスをしたって、受精すれば子供ができるし、順調ならば産まれてもくる。生物としての機能はまったく制限されていない。それを気持ち悪い、と思うのは、あくまでも精神……心の中での話だ。僕と君だって親子の年齢差なのに、あれだけヤれた。血の繋がりがないからな」
紅美子は井上の言葉につられ、落ちたがる瞼を開き、改めて横顔を眺めた。言ったとおり、父親でもおかしくない年齢だ。もし、この男と血が繋がっていたならば、あんなに抱かれなかったのだろうか。井上だって、丸の内のホテルで、襲い掛かっては来なかったのだろうか。もし本当の娘なら、それは当たり前だ。だが、その当たり前が通じない事例が、世の中にはある。そしてそういった話を聞けば、女として憤ろしく思うし、気持ち悪くも思う。
「……でも血が濃いと、健康な子供生まれてこないって言うじゃん」
「それはあくまでも結果だ。社会全体でタブー視する理由にはならない」
「中には本能的に嫌がる女がいるんでしょ、私みたいに」
「今はもちろん、昔も、そして国や文化を問わず、ほとんどの人間社会では近親相姦はタブーだ。地球の端と端で全く交流がなくてもな。まさに時空を超えている」
「歴史? 地理? どっちでもいいや。詳しいんだね。……知らないし、どうでもいい」
紅美子が話を終えようとすると、
「君と徹くんは、それだ」
と、井上が淡々と言った。
紅美子は挫けそうな瞼を宥め、
「ボケた? 私と徹は血なんか繋がってないよ」
「繋がってるようなものさ」井上はS字に入っても速度を緩めず、左右に大きくカーブを切りながら、「五歳から一緒にいるんだろ? まあ、そういうカップルは、探せば何組もいるんだろうけどね。しかし、話を聞いてる限り、徹くんの君への愛情は異常だ。男と女のものじゃない」
合流のために少しの間を置き、

