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爛れる月面
第1章 違う空を見ている
「俺だよ、早田。はー、やー、た」
「あ」

 改めて見ると、中学の時の同級生に間違いなかった。

「いや、マジ久しぶり。高校んとき西日暮里だっけか、ばったり会って以来?」
「そうね……、……あ、そうですね」

 旧知とはいえ、今は来客としてやって来ている人間だ。一応、丁寧語を使うと、早田は声を出して笑い、

「どうしたんだよ、長谷ともあろうもんが、そんなOLっぽくなっちゃってさぁ」

 気さくで話しやすいのは、中学の時から変わっていないようだった。

「OLっぽく、ってなんだよ。OLだよ」
 だから紅美子も気を遣うことなく、「ひさしぶりー、はいいんだけど、戻んなくていいの?」

 直立を崩し、お盆を抱いたまま腕組みをして応接室のほうを顎で指す。

「おー、それそれ、それでこそ長谷」早田はふき出し、「わりぃ、商談中だからまた後で。いつもどこにいんの?」

 紅美子の背後の廊下を探るように首を伸ばしながら尋ねてくる。

「来んの?」
「冷てえな。久しぶりに会ったんだから、ちょっとくらい相手してくれよ」
「……」
 こいつも伝票入力の邪魔をしにくる気か……冷ややかに早田を見ていたが、さすがに数年ぶりとあっては、「……事務室って書いたドアの向こうにいるよ」
「了解っ。じゃっ」

 溜息混じりに教えると、早田は踵を返して速足で応接室に向かい、ドアを開きざま『大変申し訳ありません。遅くなりまして──』ハキハキと伝えて入っていく。お前こそ思いっきりサラリーマンぽくなってんじゃん、と心の中で毒づき、紅美子は自室のドアを開けた。

「誰ですか! あのイケメンは!」

 すぐのところに、紗友美が立っていた。

「誰って……、中学ん時の同級生」
「ほぉ、ということは長谷さんと同じ歳ということか……。なかなかの上物ですね」
「あのー、光本さん」立つと紅美子の肩くらいまでしかない紗友美を見下ろし、「そこで聞き耳立ててたことは、伝票、全然進んでないってことかな?」
「気分転換です。イケメンを見ると、その後の仕事が捗ると思います」
「……。うんわかった。とにかくわかったから、オシゴト、頑張ろう。充分見たでしょ? 早田のこと」
「早田さんっていうんですね。下の名前は?」

 眩暈がしそうになったが、そうだ、と思いつく。
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