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爛れる月面
第3章 広がる沙漠

紅美子は携帯を表向け、母親へ紗友美の家に泊まる旨を伝えた。開店準備中なのだろう、返信はなかった。
「ウソは大抵、一つでは済まないからな。……父親は?」
「それは大丈夫」
紅美子はヘッドレストに後頭部を付いて外を眺め、「私、自分の父親の顔も知らない」
「離婚……、または死別か? どっちにしても顔くらいはわかりそうなもんだが」
「さあね。でもきっと、あんたみたいなのが父親だったのかもしれない。ママが『ヤクザだ』って言ってたから」
「僕がヤクザだって?」肩を揺すってしまって、さすがのアウディも少しだけフラついた。「そんなこと言われたのは初めてだ」
「やってることは変わんないでしょ、女にやりたい放題」
紅美子は、はあっ、と大きな溜息を挟み、
「……私ね、レイプされて出来た子供なんだ。ひっどいよね、母娘二代でレイプされてんだもん」
ためらいも蟠りもなく、幼馴染しか知らない秘密を教えた。告げてからも、何故こんなことを話しているのか、何故話しても心が潰れそうにならないのか、どちらともわからなかった。
「レイプの被害者と加害者が、仲良く温泉旅行か」
「そだね、頭おかしい。てか、いまレイプだったって認めた?」
「さあな。向こうに着いたら君のカラダに確認することにする」
「ド変態なこと考えてると、前の車に突っ込むよ?」
東京、と大きく書かれた横に広いゲートの一つをくぐった。ETCの短いバーが機敏に開いたとき、別の国への国境線を超えたかのような気分になり、
「いくつ?」
「何が」
「歳。私、あんたの歳知らない」
井上はアクセルを踏み直し、
「きっと君の母親と付き合ったほうがお似合いだ」
「そ。ママ、紹介してあげよっか?」
「君に似てる?」
「あんまり言われたことない。でも美人だよ」
「僕が君の時と同じように、ママを抱いてるところを想像してみろ。おかしくなりそうだろ?」
「……うん、やめとこ」
危うく想像しそうになって、慌てて失笑で打ち消して肩を竦めた。
「ウソは大抵、一つでは済まないからな。……父親は?」
「それは大丈夫」
紅美子はヘッドレストに後頭部を付いて外を眺め、「私、自分の父親の顔も知らない」
「離婚……、または死別か? どっちにしても顔くらいはわかりそうなもんだが」
「さあね。でもきっと、あんたみたいなのが父親だったのかもしれない。ママが『ヤクザだ』って言ってたから」
「僕がヤクザだって?」肩を揺すってしまって、さすがのアウディも少しだけフラついた。「そんなこと言われたのは初めてだ」
「やってることは変わんないでしょ、女にやりたい放題」
紅美子は、はあっ、と大きな溜息を挟み、
「……私ね、レイプされて出来た子供なんだ。ひっどいよね、母娘二代でレイプされてんだもん」
ためらいも蟠りもなく、幼馴染しか知らない秘密を教えた。告げてからも、何故こんなことを話しているのか、何故話しても心が潰れそうにならないのか、どちらともわからなかった。
「レイプの被害者と加害者が、仲良く温泉旅行か」
「そだね、頭おかしい。てか、いまレイプだったって認めた?」
「さあな。向こうに着いたら君のカラダに確認することにする」
「ド変態なこと考えてると、前の車に突っ込むよ?」
東京、と大きく書かれた横に広いゲートの一つをくぐった。ETCの短いバーが機敏に開いたとき、別の国への国境線を超えたかのような気分になり、
「いくつ?」
「何が」
「歳。私、あんたの歳知らない」
井上はアクセルを踏み直し、
「きっと君の母親と付き合ったほうがお似合いだ」
「そ。ママ、紹介してあげよっか?」
「君に似てる?」
「あんまり言われたことない。でも美人だよ」
「僕が君の時と同じように、ママを抱いてるところを想像してみろ。おかしくなりそうだろ?」
「……うん、やめとこ」
危うく想像しそうになって、慌てて失笑で打ち消して肩を竦めた。

