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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 そうだった。そのために今自分はここにいるのだ。
 桃華はちゃぶ台の前に腰を下ろした。
 古びた六畳の畳の部屋に小さなちゃぶ台と衣装ケース。秋広はちらりと部屋を一瞥し、狭いキッチンスペースに視線を戻す。
 本当に、フライパン一つしかなかった。コンロすらないスペースは借りたてのアパートのように殺風景で、どうにも寂しい。うっすらと、埃があった。
 秋広は一度拭き掃除をし、IHのコンロを準備しながら桃華に尋ねた。

「桃華さんて、何が好きですか? 普段好んで食べてるものとか」
「……肉とか」
「あ、お肉好きなんですね」
「好きっていうか、腹持ちがいいから」
「……そういう理由で」

 秋広は桃華を振り向いた。
 テレビすらない部屋。使った形跡のないキッチンスペース。
 ーーこの人は普段この部屋でたった一人で、どんなふうに生活しているんだろう。
 秋広はいつも、家だとテレビをつけている。別に観ていなくても、自分が料理をしている時以外はなんとなくつけたままにしていた。
 一人暮らしを始めた頃から、音が無いのが苦手だった。テレビから聞こえる人の声や、生活音が欲しかったのだ。
 桃華はそういう気持ちになったりしないのだろうか。
 ーー孤独を感じる瞬間は、無いのだろうか。
 秋広は買ってきた調理器具や食材を使い昼食を作りながら、そんなことをとりとめもなく考えていた。
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