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息子の嫁
第22章 退職届
ほらっ!帽子を買ってくれた時だって、姿見の鏡に私を立たせ自信をつけさせてくれたし、濡れなかった私の身体だって

駿と愛し合うようになって変わったし私――駿が居なくちゃ生きていけない……。好きよ駿…。」

そう彼女が私に云った後、自分の唇を強く押し当て、暫く私達は縺れ合うように互いの唇を吸い、それが終わると彼女が私の身体から下り、私の隣に身体を寝かせた。


「駿…。ごめんね?今夜は、私が駿にって云ってたのに……。」


そう云い、私の胸に頬を当てた。


「気にするな…。セックスをすることだけが夫婦じゃないだろう麗奈?」

「うん」


今夜の彼女が、どうしてこうなってるかが私には理解して上げることが、出来ないまま彼女を抱き寄せた。


「今夜は、このまま寝よう……。」

「うん」


彼女は黙って私に抱かれ、やがて眠り私は彼女の寝顔を見ていた。

今日、退職届を出すことを私は事前に、彼女に話してあった。

そのことと無関係ではない気がしてたし、私が好きな職場を辞めることを彼女は、悔しいだろうとも云った。

確かに長年、勤めた役所を辞めることは私達の、夢を実現させるためには避けられないことだったが、嫌な上司の言いなりだった事だけが悔しかった。

私達は、夢へとむかう大きな第一歩を踏み出した。もう後戻りは出来なかった。

きっと彼女には、私の想いが手に取るようにわかっていただけに今日、一日、彼女も私と同じ気持ちで過ごしていたに違いない。私にはそう想えた。

長く苦しい、今日の時間を過ごしていたのは私だけではなかった。

私に心配かけまいと彼女は、わざと明るく振る舞っていたが彼女は、芝居が下手だった。
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