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哀色夜伽草紙
第8章 突然降りた幕
「とにかく、これは決定事項よ。貴女から壱と離れなさい」

「……」

有無を言わさない口調だったけれど、私は返事をしなかった。

長谷川家は古くから続く旧家だ。

私は母がこの家から出て嫁いだから直接は関係ないけれど、壱くんは直系だ。

やがては継ぐことが決まっているし、仕事はしなくても生きてはいけるほどの資産家なのは知っている。

伯父が会社をいくつか経営しているが、その殆どはおじいちゃんが牛耳っているらしい。

今はコラムニストとして活動しているけれど……これらをいずれ継ぐことになっているのは壱くんも分かっている筈だ。

そしてそのためには跡継ぎを作らなければならない。

私と壱くんは叔父と姪だからそれは出来ないことなのだ。

何食わぬ顔で席に戻ると少し不安そうな顔をした壱くんがチラリと見てきたから、大丈夫だという気持ちを込めて微笑んでみせた。

(何でもない)

元山さんは壱くんをうっとりした目で見続けていて、そのべっとりとした粘着質の視線に悪酔いみたいに本当に気持ち悪くなって頭がガンガンとしてきたので、小さな声で母に言う


「頭痛いし気持ち悪くなってきたから帰る」

「大丈夫?真っ青よ、一緒に帰ろうか」

母は私を気遣ってくれて、おじいちゃんに話して食事を終える前に帰ることにした。

「叔母さん、琴莉はオレが送っていくよ」

「壱くんじゃヤダ……お母さん来て」

すぐに壱くんが駆け寄ってきたけどそれを顔も見ずに断った。

早く、壱くんから離れないと

(離れたくないけど)

早く、ここから立ち去らないと

「琴莉……」

顔を見たら縋ってしまう。でももう夢は終わりだ。

「じゃあね……壱くん」

下を向いたまま、母に肩を抱かれて立ち上がる。

またね、とは言えなかった。

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