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哀色夜伽草紙
第8章 突然降りた幕
午前のマーケティング調査は昨日とは別で駅前で行われた。

東京とは違う人の流れ、何だか爽やかに見えるのは空気のせいだろうか。

その爽やかな気分の仕事を終え、飛行機で空港についたのは19時を過ぎていた。

「じゃあ、また来週会社でな!」

これからまだ会社に戻ると言う井坂課長とは空港で解散し、同じ方向に帰る電車に羽田くんと乗る。

まだ帰宅ラッシュで、車内は中々に混んでいる

「札幌は空気がきれいだったね」

空気の重さを感じて思わずそんなことを言ってみた。
特に意味はなかったのだが無言でいるのも辛かった。


「そうですね、心なしかご飯も美味しかったです。中々ハードでしたが有意義で楽しかった。開発課の出張ほぼなかったですしね」

相変わらずほわっとした笑顔を浮かべた羽田くんが嬉しそうに語った。

「良かったね。でも本当は開発の方がやりたかったんじゃないの?マーケティング課ってイメージが貴方にはない気がする」

「そんな事ないですよ。たまたま理系だったから開発に回ったのもあります。それも嫌いじゃないですが、データ扱うの好きですし、まぁ……こちらに来たかったんです」

そう言うと、羽田くんが私をジッと見つめてきた。
その真っ直ぐな目に言葉が出ないでいると、ガタっと電車がカーブで揺れて、咄嗟な動きについていけずによろめいてしまう。

「あっ」

転びそうになったその時、ぐっと羽田くんが腕を掴んで立たせてくれた。

「大丈夫ですか?」

「あ、うん。有難う」

細いのに意外と力強い腕で不覚にもドキッとしてしまった。

あの夢でも、羽田くんの抱き方は強引で大胆で嫌がりながらも私は翻弄されていた。

(あれは夢よ)

駅で扉が開く度に混雑で身体が密着してしまい、すぐ近くに羽田くんの顔がきた

綺麗なカーブを描く頬、高い鼻、そしてガラス玉のように澄んだ瞳。

けれど、こんなに接近しても表情ひとつ動かさない。

やっぱり夢だと思った。
それが証拠に今だって、私一人だけがこんなに動揺していて彼は普通だからだ。

やがて乗り換えようとして、そのまま乗っていく羽田くんに挨拶した

「お疲れ様」

手を振ると小さな呟きが聞こえた。

「本当に残酷な人だ」

「え?」

言葉の意味を計りかね聞き返すと羽田くんは微笑む

「また、来週」
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