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哀色夜伽草紙
第7章 幻と現実

窓辺に天使を見た。
夜中の暗闇の中でダウンライトに照らされたその人の背中には確かに羽根があった。
その羽根は真っ黒で大きくて、天使の背中を、姿をすっぽりと覆っていた。
「許さない、絶対に……渡さない……絶対に」
(何を?…誰を?…)
強烈な眠気が私を眠りに引きずり込む。
その天使は怒りに満ちて居たのに、同時に泣いているように見えた。
だから眠気の中で揺蕩いながらも手を伸ばして
「泣かないで」
そう言った気がする。
朝、気付いた時にはホテルの自分の部屋のベッドに居た。
テーブルにはオツマミの袋とビールの缶が2本空けられて、真新しい缶が2本袋に残っていて、身体を見るとホテルのパジャマに袖を通して寝ていた。
(え、……まさか夢?)
夢にしては生々しい行為の記憶がある。羽田くんの怖いほどの色気を纏ったあの目が目の奥に焼き付いているのに。
ゆっくり起き上がるとシャワーを浴びにバスルームに行く。跡がないか探すが特にわからなかった。
鏡に映しても、特に鬱血した痕があるわけでもなく、付けられた痕はない。身体も痛くない。
毎日壱くんに抱かれている身体だから?……特に変化はなかった。
ただひとつ、頬に涙の痕は見つかった。
(やっぱり、夢?)
考えても分からないので、ぬるめのシャワーを浴びてしっかり頭を起こしてから着替えをする。
スマートフォンには20分ほど前に着ていた井坂課長からのメッセージ
『飛行機の時間までのマーケティング調査に出るから9時にロビー集合』
時計を見るとあと20分…急いで買っておいたパンを齧り、ロビーに向かった
指定の5分前に着くと既に二人は来ていた。
「おはようございます」
「お、来たか眠れたか?」
お母さんみたいなことを言う井坂課長に頷くと何故かとても嬉しそうだ。
「オレは少し眠いですよ、課長飲ませるから……」
「すまんすまん、帰らなくて良いと思うと飲みすぎるな、部屋で爆睡してたぞ……」
「そうですよ、オレベッドの端で寝ましたからね……」
顔を見てもいつもどおりの無表情の羽田くん。
しかも二人は同じ部屋で寝ていたのなら…やはりアレは夢だったのだ。
私が見た……少し危ない夢だったのかもしれない。
そう、自分に言い聞かせた。
夜中の暗闇の中でダウンライトに照らされたその人の背中には確かに羽根があった。
その羽根は真っ黒で大きくて、天使の背中を、姿をすっぽりと覆っていた。
「許さない、絶対に……渡さない……絶対に」
(何を?…誰を?…)
強烈な眠気が私を眠りに引きずり込む。
その天使は怒りに満ちて居たのに、同時に泣いているように見えた。
だから眠気の中で揺蕩いながらも手を伸ばして
「泣かないで」
そう言った気がする。
朝、気付いた時にはホテルの自分の部屋のベッドに居た。
テーブルにはオツマミの袋とビールの缶が2本空けられて、真新しい缶が2本袋に残っていて、身体を見るとホテルのパジャマに袖を通して寝ていた。
(え、……まさか夢?)
夢にしては生々しい行為の記憶がある。羽田くんの怖いほどの色気を纏ったあの目が目の奥に焼き付いているのに。
ゆっくり起き上がるとシャワーを浴びにバスルームに行く。跡がないか探すが特にわからなかった。
鏡に映しても、特に鬱血した痕があるわけでもなく、付けられた痕はない。身体も痛くない。
毎日壱くんに抱かれている身体だから?……特に変化はなかった。
ただひとつ、頬に涙の痕は見つかった。
(やっぱり、夢?)
考えても分からないので、ぬるめのシャワーを浴びてしっかり頭を起こしてから着替えをする。
スマートフォンには20分ほど前に着ていた井坂課長からのメッセージ
『飛行機の時間までのマーケティング調査に出るから9時にロビー集合』
時計を見るとあと20分…急いで買っておいたパンを齧り、ロビーに向かった
指定の5分前に着くと既に二人は来ていた。
「おはようございます」
「お、来たか眠れたか?」
お母さんみたいなことを言う井坂課長に頷くと何故かとても嬉しそうだ。
「オレは少し眠いですよ、課長飲ませるから……」
「すまんすまん、帰らなくて良いと思うと飲みすぎるな、部屋で爆睡してたぞ……」
「そうですよ、オレベッドの端で寝ましたからね……」
顔を見てもいつもどおりの無表情の羽田くん。
しかも二人は同じ部屋で寝ていたのなら…やはりアレは夢だったのだ。
私が見た……少し危ない夢だったのかもしれない。
そう、自分に言い聞かせた。

