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哀色夜伽草紙
第5章 狂った時計
初めて壱くんに抱かれたのは私が大学生の時だったけれど、壱くんはそれまでも私の身体に女としての快感を与えていた。

触れたり、キスの合間に太腿から秘部をゆっくりと愛撫をしたり……今なら分かるがあれは身体を、女として開発されていたのだ。

「琴莉はオレの大事なヒトだから、初めても最後もオレのものだよ?一生愛し続けるんだ」

壱くんがよく私に言う。

私には壱くんしかいない始まりからずっと壱くんが与えるものが私を作ってきた。

けれど、終わりはどうなのだろう?

跡取りとして家を継ぐべき人が禁忌の関係のままで良いはずがない。

そう考えてすぐに声が甦る。

『天国に連れて行ってあげようか』

(何で今……?)

私はその声を振り払いたくて慌てて首を振った。

「痛……」

「集中してないな、この小悪魔め」

壱くんが私を後ろから貫いて揺らしながら、肩を甘噛みしてきた。

「ん、キモチいいから……ぁ…うっとりしてただけ…
もっと、ちょうだい…んっ」

「まったく。何度抱いても琴莉はオレをそうやって惑わすんだよな……それならもっと乱れなよ……」

「あっ……」

一際強く後ろから私の尻を掴んで壱くんが穿つと、子宮が疼くから自ら身体を動かして押し付けて壱くんを誘う。

(もっと、もっと…)

壱くんが育て上げたこの身体は、淫らに刺激を求め、貪欲に快楽を貪るのだ。

「ぁあ……」

「琴莉、愛してる……」

囁く声が私を果てへと誘う。その彼の目が潤んで泣いているように見えた。

何が悲しいの?

いいえ?泣いているのは私?

『ナンデソンナニ
哀しそうなの』

頭に響く声に私は首を振る

(いいえ、いいえ、哀しくなんかない)

『天国に連れて行ってあげようか』

失うと分かっていても

行き着く先が地獄でも

今だけでも壱くんの傍に居られるなら

……私は哀しくなんかない

きっと、たぶん……

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