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哀色夜伽草紙
第2章 大事なヒト
「また余計なこと考えてるな琴莉」


シーツを取り替えてルームウェアに着替えていると、ローブを羽織っただけの壱くんがミネラルウォーターのペットボトルを咥えてベッドの横の椅子に座りながらそう言った。

ただ水を飲むだけのその姿も、セットしない濡れた髪が降りているからか艶かしく見える。

私と血が繋がっているはずなのにあまりにも美貌に差があるのはどうしてだろうと、少し狡いと思ってしまう。

「余計なことって?特に、何も?」

誤魔化せているとは思わないけれど、この複雑な暗い想いを伝える事は得策ではない。

「お前はオレの宿命の女だから、何も心配しなくていいんだよ」

「まぁたそれ?」

すぐに壱くんがそれを言う。だから私もいつものように返す。


「ファム・ファタール?」

『宿命の女』だなんて、私を愛したら貴方は……破滅するの?





それを前に抗議したら、違うと笑われたっけ。

「琴莉にしたら勉強したんだな?ファム・ファタールを知ってるって事は」

可笑しそうに笑うのは私をいつもお馬鹿な子だと思っているからだった。

確かに私は壱くんに比べて勉強も出来ないし、思考力もある方だとは思わないけれど。

「そうよ、勉強したんだからっ」

悔しくてその時は少しは認めてくれたかしらなんて胸を反らして自慢したのに

「ふはは、ちょうど西洋美術の特集番組が何かで取り上げられたんだろ?」

なんて図星をつかれてしまった。

「うん、ホントはそう……」

「そういう所がお前の可愛い所だな」

そして結局そう言ってキスなんかされて、甘やかされてしまう。

あの時も今も私は壱くんに敵わない。



今宵はいつもこの辺で終わる会話が終わらず、壱くんが小さく呟いた。

「でも確かに琴莉はオレのファム・ファタールかもしれないな」

「え?」

妙に冷めた声に聞こえた。

「ただし、オレが行き着くのは破滅じゃない」

「本当に?」

怖い、真実を知ってからその言葉が怖いのよ私。

不安になって真剣な目の壱くんにしがみつくように正面から首に抱きついた。

「ああ……全部作り変えるんだからな」

その声が深く、耳に響いた。


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