この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
もうLOVEっ!ハニー!
第22章 三角の終焉

 視線を落としていたかんながやっとマグカップに手を伸ばした。指先から熱が体中に巡ったのか、さっきまでの暗さが薄れている。
「かんなもおるし、アパート借りる話なんやけど」
 やはりそのことは触れるか、とペンを置いて顔を向ける。
「なかったことにしてくれん?」
「え」
 発声までは至らなかったものの、かんなの口からも同じ反応が飛び出した気がする。隣の彼氏を見つめる目が驚きに波打っている。
「わざわざ外に出んでも一般寮に空きあるやんって思ったんが一つ。もう一つは……」
 ああ、この二人は眼が似てるな。
 長い睫毛と、大きな瞳。その中に燃える意思を携えている。

「こっちが居場所奪われるん、おかしいわ」

 低い、低い声だった。その視線は自分に向いているけれど、貫いた先の病院のベッドに横になる親友に刺さっているように遠い。
「清は退院しても松葉杖やろ。ここより一般寮のが教室に近い。スロープとか、エレベーターもあっちのが便利やし。どう?」
「どうって……僕の判断じゃ難しいけど。学園長に掛け合うことはできるよ。理由もその二つならスムーズかもしれない。ハンディキャップがある生徒に寄り添うのは聞こえもいいからね。ただ、本人の同意がいる」
「俺が説得してくるわ」
「待ってください」
 細いながらも固い声が遮る。
「岳斗さんが会うのは、ありえないです……」
「殺すから?」
 軽口のように出たそのフレーズに、入学時の彼の姿が重なった。中学時代にどこまで人を追い詰めたのか全ては聞いていないが、説得力がありすぎるのだ。
「ち、がいます。隆人さんに任せましょうよ」
「住む場所変わっても、通学しとる限りは顔合わせるで。手出すほど馬鹿ちゃうわ」
「僕も同席するよ」
 まるで事実を知っている一人かのように、黒い会話に巻き込まれているな。コーヒーの湯気が消えたのを見て、自分のを飲むのを忘れていたなとソファに戻る。
 ぎしり、と座って二人に相対すると、つばるとかんなと話した日が過ぎった。あの日も言葉一つすら間違えてはいけないと緊張したな。
「それが、良いと思います」
「土曜日行く予定だけど、その時でいいのかな」
 即答ではない沈黙が挟まった。揺れる瞳が、覚悟を決める時間を告げていた。
「いい。車乗せてってな」
「もちろん」
 口につけたコーヒーの苦みが舌を包む。会話は終わりだと二人は立ち上がった。
/437ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ