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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
「どちらまで?」

運転手の声がそっけない。

「あぁ、一番近いホテルに」
「……一番近いとこね」

ミラーで客を見定めた彼は、鼻で笑ってアクセルを踏んだ。運転手の態度は失礼なものに違いなかったが、それどころではない。
膝に触れてきた女の手が、腿をさする。際どい場所を掠める動きは手慣れたもので、彼女のイメージをまたも塗り替えていく。

(いや、これがこの女の正体なんだろう)

彼は平然と外の景色を眺めた。婚約者への裏切り行為を平気でやってのける女。貞操観念というものが無いのか。そう嫌悪する一方で、優越を感じている自分を自覚した。
今夜の誘いは独身最後の思い出作りなのだろう。そう、彼女なら、何食わぬ顔で男の元へ戻っていける。その男はいくつもの病院経営に成功している実力者の御曹司で、誰もが羨む玉の輿だった。

(そいつの前では、いったいどんな顔でいるのか。ベッドではどんな風に……)

あの一夜を思い出し、今夜の情事を夢想し始めた時、ミラー越しに運転手と目が合った。北沢が肩に頭をのせてくる。上目使いで見つめ、遼さん、と声を出さずに言った。彼はその頬に触れ、そっと唇を合わせた。

「嬉し……」

北沢の言葉を遮り、再び唇を塞いで舌を入れた。絡み合う熱情に期待が高まる。彼は息つく間を与えない程、激しく口を吸った。

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