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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
「このままここで、つまらないお喋りで終わらせる方がいいですか?」

北沢の瞳から誘いの色を嗅ぎとった遼は、唇を奪いたい衝動にかられた。断る理由などない。二度と得られないと諦めたあの夜が手に入る最後のチャンスだ。

「解散したらタクシーを呼ぶよ」
「ありがとうございます」

席に着いた遼は逸る気持ちを押さえ、皆の輪に入って調子を合わせた。戻ってきた北沢を見ないよう心掛け、注がれた酒に口をつけるのをやめた。
「そろそろ二次会のカラオケに」と、スタッフの一人が立ち上がった。遼は明日の予定を理由にそれを断り、「これで楽しんで」と、何枚かの札を手渡した。

店の出口に向かうスタッフの一人が振り返った。

「北沢さんも行きましょうよ」
「ごめんね穂花ちゃん、彼が待ってるの」

皆が冷やかしの声を上げた。

「いいなぁ、熱々ですね、お幸せに、うふっ。私達はカラオケで発散してきます。では、お疲れ様でしたぁ」
「みんなで楽しんできて。お疲れ様、楽しかったわ、おやすみなさい」

会計を終えた遼が外に出ると、北沢が店先で一人立っていた。何を話すべきか言葉を探したが、話す間もなくタクシーが到着した。彼女が軽く目配せをして先に乗り込み、彼がそのあとに続いた。

もう引き返せない。彼女に迷いはないのか。いや、迷いがあれば誘ってくるわけが無い。
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