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愛おしいキミに極甘な林檎を
第65章 番外編:Totus tuus
郁哉さんが異動できないなら、私がこの職場から去る……つまり、仕事を辞めるしかない。
でも、すぐに働く場所が見つかるとは限らない。
それに、今の仕事も慣れてきたところだ。給料も悪くないし、ここで退職するのは勿体ないような気もする。
もし、今の会社を辞めたいと話したら、ソラ先輩はどういう反応をするだろう。
「いたっ!」
あれこれ考えながら縫っていたら針の先が指に当たった。
だめだ。しっかりしないと……。
それから縫ったスカートを穿いて仕事に戻った。
何事もなかったように時間が過ぎていった。
まだ仕事が残っていたけど、郁哉さんが気を利かせてくれて定時で帰ることができた。
スカートが破れている感じはしない。
縫ったところが切れなくてよかった。
自宅の前に立ってホッとしてから、玄関のドアを開ける。
「あっ。おかえり、風子」
玄関に続く廊下にソラ先輩が立っていた。
白いワイシャツとズボンを身に着けている。ネクタイは外しているけど、仕事に行く時の姿と同じだ。
「今帰ってきたばかりですか?」
「さっき帰ってきたよ。
冷蔵庫を見たら茹でたブロッコリーだらけだったから、買い物に行こうかと思っていたところ。
晩御飯は俺が作るから楽しみにしていて」
「わあ……。楽しみです。
じゃあ、どっ、どうぞ。気をつけていってらっしゃい」
ヒールを脱いで家に上がってから壁に背を向けて移動する。
「なんか怪しいな」

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