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蜜会
第2章 湧き出す

公務員を変に誤解されるのもいやだけど、確かに今の民間企業の人手不足はきっと私たちにはわからない。
安宅さんは管理職だから残業代もほとんど出ていないんじゃないか。
ちょっとかわいそうだな、と視線を落とすとさっき飲んだお茶を置いてあるドリンクホルダーのわきに女物で布製のメガネケースらしきものがあった。
「これ、安宅さんの?」
「いや、カミさんのサングラス」
「へぇ」
聞けば、奥さんがこの赤い車を選んで買って乗り回しているとかで普段の安宅さんは会社の車で通勤しているらしい。
なるほど、振り返ると後ろの座席には子供サイズの野球帽なんかが置いてある。
その視線に気づいたのか「長男のだよ」と教えてくれた。
「ま、休日出勤も悪くないな」
「え?」
たまたま赤信号だったから、安宅さんは私を見てまたにっこり笑った。
「せっかくの連休も出なきゃならないからさ。昨日は天気も悪かったし、仕事を終えてクタクタで所長に事務所の鍵を渡しに行ったんだけどね。……でもそのおかげで、こんな可愛い子に会えたから」
出会って三十分のおじさんに、そんなことを言われるなんて思っていなくて、ちょっと私はドキっとした。
「か、可愛くないです」
「ううん、目がぱっちりしてて、色が白くて美人だよ。……俺の肩書は副長だけど、瑠璃ちゃんたちは何か課長とかのほかに階級があるの?」
「は、はい。階級っていうか参事、副参事って感じで。私は入ったばかりのときは主事っていう役職だったんですけど、この四月から主任になりました」
「へぇ、出世したんだ」
別にそんな大したものじゃない。
入って四年経ったから昇格試験を受けて妥当に上がっただけ。
それでも任される仕事は増え、責任が出てきたし、四年やってやっと課全体の仕事が見えて来たら仕事が面白くなった。
市内を車で動くうちにマチのことも詳しくなれたし、今ほんとうに私は働いていて楽しい。
だけど……
安宅さんは管理職だから残業代もほとんど出ていないんじゃないか。
ちょっとかわいそうだな、と視線を落とすとさっき飲んだお茶を置いてあるドリンクホルダーのわきに女物で布製のメガネケースらしきものがあった。
「これ、安宅さんの?」
「いや、カミさんのサングラス」
「へぇ」
聞けば、奥さんがこの赤い車を選んで買って乗り回しているとかで普段の安宅さんは会社の車で通勤しているらしい。
なるほど、振り返ると後ろの座席には子供サイズの野球帽なんかが置いてある。
その視線に気づいたのか「長男のだよ」と教えてくれた。
「ま、休日出勤も悪くないな」
「え?」
たまたま赤信号だったから、安宅さんは私を見てまたにっこり笑った。
「せっかくの連休も出なきゃならないからさ。昨日は天気も悪かったし、仕事を終えてクタクタで所長に事務所の鍵を渡しに行ったんだけどね。……でもそのおかげで、こんな可愛い子に会えたから」
出会って三十分のおじさんに、そんなことを言われるなんて思っていなくて、ちょっと私はドキっとした。
「か、可愛くないです」
「ううん、目がぱっちりしてて、色が白くて美人だよ。……俺の肩書は副長だけど、瑠璃ちゃんたちは何か課長とかのほかに階級があるの?」
「は、はい。階級っていうか参事、副参事って感じで。私は入ったばかりのときは主事っていう役職だったんですけど、この四月から主任になりました」
「へぇ、出世したんだ」
別にそんな大したものじゃない。
入って四年経ったから昇格試験を受けて妥当に上がっただけ。
それでも任される仕事は増え、責任が出てきたし、四年やってやっと課全体の仕事が見えて来たら仕事が面白くなった。
市内を車で動くうちにマチのことも詳しくなれたし、今ほんとうに私は働いていて楽しい。
だけど……

