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蜜会
第4章 満たされる
 入ろっか、と義樹がリゾートホテル風の湖畔のラブホテルに当たり前のように言って車を入れた。

 こういうホテルに入ったのは久々だ。

 南国をイメージした作りで、選んだ部屋は面積も広め。

 床はフローリングで、スリッパじゃなくてもいいみたい。

 きれいに磨かれていて、普通のホテルよりも気楽でいいな。

 大きなベッドは白いシーツで清潔そうだ。

 へぇ、と義樹が私の真後ろで部屋をぐるりと見渡した。


「普通の部屋なんだね。てっきり、ベッドが回転するのかと思ってた」

「やだ、それ何?」

「ああ、瑠璃ちゃんの世代は知らないか」


 昭和の時代のラブホテルには、スイッチを押すと回る、丸いベッドがあったという話をしてくれた。


「それも面白そうだけど。でも、普通がいいな」

「そうだね。お湯、張ってくるね」


 義樹の声が弾んでいて、とても楽しそうだ。

 前から「一緒に風呂に入りたい」って言っていたからだな。


「お、入浴剤があるよ」


 バスルームのほうから義樹が声をかけてきた。

 そちらに行くと、高級そうなアメニティのカゴの中に確かにそれらしい袋があった。


「じゃ、入れようよ」

「あ、うーん」


 何かを思い出したかのように困った顔をして考えている義樹を見て、ああ、と察した。

 匂いがつくのを恐れているんだ。

 入浴剤を手に取って能書きを見ると、けっこう香りが残りそうな感じだもの。


「しっかり流せば問題ないと思うけど、今日はなしね」

「うん」


 残念そうに頷き、そのまま浴室に入ると義樹が蛇口をひねる音がした。
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