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蜜会
第2章 湧き出す
(あン……)


 声が出そうになったので、それを必死に抑えたとき私は誇張でもなんでもなく「気持ちいい」「もっと強く触ってほしい」と思えてしまった。

 安宅さんの腕に抱かれ、胸に頬をくっつけていると、心地よくなったのだ。

 服からは洗濯したてのいい香り。

 四十代のわりに、私が思い浮かべていた「中年」のイメージは全くない、清潔感あるがっちりした胸板。

 全く、いやじゃない。

 このまま、もし安宅さんが「エッチしよう」って言ったら私はOKを出しちゃうな。

 理由はわからないんだけど、抱かれてもいい。

 それくらい、安宅さんの手は不快じゃなかったし、彼の笑顔は私の心の内側に巧みに入り込んできていた。


「瑠璃ちゃん」


 一瞬だったかもしれないし、たっぷり数秒の間だったかもしれない。

 抱きしめられて胸に触れられたまま無言でいると、安宅さんに名前を呼ばれた。


「ほんとに可愛いよ」


 そう言って胸から手を離し、私のあごを軽く掴むと、唇を寄せてきた。

 これから何をしようとしているのかわからないほど、私も子供じゃない。

 されるままに顔を上に向け、目を閉じたら定石どおりに安宅さんは私にキスをした。






 ―――キスってこんなに感じるもの?
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