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蜜会
第2章 湧き出す
 そこからは私も警戒を解いて、安宅さんの若いころの話とかを聞かせてもらってめちゃくちゃ笑った。


「ディズニーランドの電気系統の工事に行ったんだけどさ、やっぱり工事とかって閉園後にやるでしょ? そうすると、仕事を終えて戻ってきた着ぐるみの中に入ってるおじさんたちと通路で会うんだよ……」

「だめ! だめですよ! それ以上言うとディズニーの人に怒られますよ!」

「あはは、そうだね。……今は夜勤なんかしたくないけど、若いころはお金にもなるし本当に夜勤で見られる世界が楽しかったよ」


 十九歳も離れてるおじさんの話がこんなに面白いなんて思ってもいなかった。

 職場では、うちやよその課長とかの話は、もちろん興味深いけど仕事が絡むので真面目に聞かなくちゃいけないし、どこかしらバブル時代の自慢ばかりで私たちの世代には想像もつかなかったり、面白くないことも多い。

 でも安宅さんは自慢もしないし、そんなに「おじさん」って感じもしなくてあまり年長者として私に接していない気がする。

 それに安宅さんは私の話もよく聞いてくれて、「それは何? どうして?」とかうまく相槌を打って話を広げてくれるし、とにかく話すのも聞くのも楽しい。


「でもまぁ、瑠璃ちゃんのお父さんのほうが長いんだから、俺より物知りだし経験豊富だと思うよ」

「へえ……うちの父、家であんまりしゃべんないんです」

「俺だって、家族に電気工事についてとかなんか話さないよ。瑠璃ちゃんが聞いてくれようとしたから、しゃべっただけ」
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