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蜜会
第2章 湧き出す

そんな感じで「物知りで楽しい安宅さん」は会って二時間半でわりと私の心の中にするっと入ってきた。
……とか考えていたら、メーカー純正品の中では最新型だというナビのおかげで私が適当にしか道を教えないでも簡単にアパートのそばまで来た。
まだ夕方にもなっていない。
「そこの角の、白い三階建て」
「ああ、あれね。停めるスペースはあるかな?」
「うん、駐車場は無料で停める場所もたくさんあって自由なの」
「へぇ、停め放題か。すごいね」
「大家さん、太っ腹だから」
うちの大家さんも市役所OBで、退職金を元手に不動産業を始めた人だ。
私が新卒で隣県から引っ越して入庁すると聞いて「後輩だから」と備品の古びた洗濯機を新品に入れ替えてくれたり電気コンロを無料でIHクッキングヒーターにしてくれたりした。
敷地内には同じハイツが三棟ある。
その周囲を見渡すけど、さすがに祝日の午後だからか。
いつもは垣根の剪定をしたりゴミ捨て場をきれいに掃除してくれている大家さんの姿がないのを確認したので安宅さんに言ってみた。
「帰る前に冷蔵庫の掃除しちゃったから何もないけど、コーヒーでいいなら淹れるんで飲んでいきます?」
「え、いいのかい」
「だって、こんなに遠いのに送ってくれたから」
単に帰りのJR代が浮いたからそのお礼ってわけじゃなく、長距離運転をしてもらったのに休ませないのも失礼だろうし、あと十年もたたずに定年を迎えるというのに父の仕事内容とかに私は全く興味を持たずにここまで来てしまったことを気づかせてくれた。
今度は父の仕事の話をもっとまじめに聞いてみようと思わせてくれたから何かお礼がしたかったのだ。
若い男だったらいきなり家に上げるのはやっぱり警戒するし、なんか男に下心があってもイヤだけど、安宅さんはお子さんもいるような人だからきっと大丈夫だろう。
「あまり掃除してませんからね」
「そんなの気にしないよ、じゃあ遠慮なくごちそうになるね」
……とか考えていたら、メーカー純正品の中では最新型だというナビのおかげで私が適当にしか道を教えないでも簡単にアパートのそばまで来た。
まだ夕方にもなっていない。
「そこの角の、白い三階建て」
「ああ、あれね。停めるスペースはあるかな?」
「うん、駐車場は無料で停める場所もたくさんあって自由なの」
「へぇ、停め放題か。すごいね」
「大家さん、太っ腹だから」
うちの大家さんも市役所OBで、退職金を元手に不動産業を始めた人だ。
私が新卒で隣県から引っ越して入庁すると聞いて「後輩だから」と備品の古びた洗濯機を新品に入れ替えてくれたり電気コンロを無料でIHクッキングヒーターにしてくれたりした。
敷地内には同じハイツが三棟ある。
その周囲を見渡すけど、さすがに祝日の午後だからか。
いつもは垣根の剪定をしたりゴミ捨て場をきれいに掃除してくれている大家さんの姿がないのを確認したので安宅さんに言ってみた。
「帰る前に冷蔵庫の掃除しちゃったから何もないけど、コーヒーでいいなら淹れるんで飲んでいきます?」
「え、いいのかい」
「だって、こんなに遠いのに送ってくれたから」
単に帰りのJR代が浮いたからそのお礼ってわけじゃなく、長距離運転をしてもらったのに休ませないのも失礼だろうし、あと十年もたたずに定年を迎えるというのに父の仕事内容とかに私は全く興味を持たずにここまで来てしまったことを気づかせてくれた。
今度は父の仕事の話をもっとまじめに聞いてみようと思わせてくれたから何かお礼がしたかったのだ。
若い男だったらいきなり家に上げるのはやっぱり警戒するし、なんか男に下心があってもイヤだけど、安宅さんはお子さんもいるような人だからきっと大丈夫だろう。
「あまり掃除してませんからね」
「そんなの気にしないよ、じゃあ遠慮なくごちそうになるね」

