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忘れられし花
第18章 花嵐
 表情は見えなくとも、激しく震える手が、光の苦悩を雄弁に物語っていた。

「私が兄より先に生まれてさえいれば、兄は生きていられた……。私は生まれる順番を間違えたのです。私が、兄の代わりに、死ねば良かった……! ……っ!」

 体を折り、激しく咳き込む光の背を、奏はさすった。
光の根深い罪悪感の根源は、ここにあったのだ。不自由な体と忌み子という出生、さらに双子の兄の死という重荷を背負った光は、どんなに苦しかったことだろう。
 自らの死を望むほど、光は苦しんでいた。

「いいえ。光様はお兄さんを殺してなんかいませんし、間違えてもいません」

 背中をさすりながら、どんなに苦しくても辛くても涙を流すことのできない光の代わりに、奏は泣いた。
 光の背負った苦しみに、涙が溢れて止まらなかった。

「光様の体も、お兄さんの後に生まれたのも、全部、光様のせいじゃないです。光様は生きていていいんです。光様が亡くなったお兄さんのことを想うなら、光様にはお兄さんの分まで生きて幸せになる義務があります」

 光は咳が治まると、再び奏の手を借りて体を起こした。苦しいはずなのに、決して横になろうとはしない。

「私は、私ではなく、兄に、生きてほしかった……」

 優しい光の願い。
 光は誰かを犠牲にしてまで、自分が生きることを、望まない。
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