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忘れられし花
第18章 花嵐

光が兄を殺した?
意識を失った光の細く薄い体を、奏はしっかりと抱き止めた。
誰よりも優しい光が、誰かを殺めることなどできるはずがない。絶対に何かの間違いだ。
苦し気に喘ぐ、陶器人形のように繊細で綺麗な顔を、奏はただ呆然と見つめた。
やがて光は意識を取り戻すと、静かに奏から体を離した。横になることを断り端然と座すその姿からは強い意志と矜持が感じられ、奏は心配しつつも光の傍に控えた。
血の気の失せた、いつもよりさらに白い顔で、光は弱いながらもしっかりとした口調で話し始めた。
「……今まで黙っていて申し訳ありません。私は、双子の弟として、この世に生を享けたのです」
「双子……」
「はい。ですが、鷹取家の慣例として、生まれた赤子が双子の場合、先に生まれた方を殺すことになっております。忌み子といえど例外ではありません」
そういう習わしを持つ家のことは、奏も聞いたことがある。だが、鷹取家がそのような家だったとは知らなかった。
「ですから兄は生後すぐに殺され、私だけがこうしてのうのうと生き長らえているのです」
俯く光の手を、奏は握った。淡い栗色の髪がはらりと落ちかかり、光の表情を覆い隠す。
「私のせいで、兄は殺されました。私が兄を殺したも同然なのです」
奏は嫌な予感がした。
これ以上、光に話を続けさせてはいけない。自分自身の言葉が刃となり、光を傷つけることはわかっていた。だが、毅然とした光に気圧され、動くことができなかった。
「本当に殺されるべきだったのは兄ではなく、私の方だったのに……!」
意識を失った光の細く薄い体を、奏はしっかりと抱き止めた。
誰よりも優しい光が、誰かを殺めることなどできるはずがない。絶対に何かの間違いだ。
苦し気に喘ぐ、陶器人形のように繊細で綺麗な顔を、奏はただ呆然と見つめた。
やがて光は意識を取り戻すと、静かに奏から体を離した。横になることを断り端然と座すその姿からは強い意志と矜持が感じられ、奏は心配しつつも光の傍に控えた。
血の気の失せた、いつもよりさらに白い顔で、光は弱いながらもしっかりとした口調で話し始めた。
「……今まで黙っていて申し訳ありません。私は、双子の弟として、この世に生を享けたのです」
「双子……」
「はい。ですが、鷹取家の慣例として、生まれた赤子が双子の場合、先に生まれた方を殺すことになっております。忌み子といえど例外ではありません」
そういう習わしを持つ家のことは、奏も聞いたことがある。だが、鷹取家がそのような家だったとは知らなかった。
「ですから兄は生後すぐに殺され、私だけがこうしてのうのうと生き長らえているのです」
俯く光の手を、奏は握った。淡い栗色の髪がはらりと落ちかかり、光の表情を覆い隠す。
「私のせいで、兄は殺されました。私が兄を殺したも同然なのです」
奏は嫌な予感がした。
これ以上、光に話を続けさせてはいけない。自分自身の言葉が刃となり、光を傷つけることはわかっていた。だが、毅然とした光に気圧され、動くことができなかった。
「本当に殺されるべきだったのは兄ではなく、私の方だったのに……!」

