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忘れられし花
第18章 花嵐

「優しい光様のお兄さんなら、優しい人に決まってます。だからお兄さんはきっと、光様に生きて幸せになってほしいと願っているはずです」
「それでも……もしここにいるのが兄だったとしたら……。あなたはこんなに苦労しなくて済んだはずです」
「もしここにいるのが光様でなくお兄さんだったら、僕はここにいません。だって僕は光様の世話係としてここへ来たんですから」
泣きながら少し拗ねて言うと、光はあっという顔になった。
「あなたと出会えたのは、私の体が不自由なせいでしたね……。生まれて初めて、この体に感謝したくなりました」
すべてを飲み込んで淡く儚く微笑む光に、涙がとめどなく流れ落ちる。
「奏。泣かないで……」
光は恐る恐る腕を伸ばして、泣きじゃくる奏の涙を、細い指で拭った。
奏は頬に伸ばされた光の手の上に、自分の手を重ねた。
「光様は僕を怖がらないでください。もっと僕に触ってください。僕のすべては光様のものです。だから僕を……」
「奏」
光は奏の名を呼んで、奏の言葉を遮った。
「それ以上言わないでください。それは、主である私が言わなければならない言葉です」
光は閉じていた目を開けた。 花が蕾をほどくように、美しい瞳が、開く。
「奏。あなたは私の傍で、私と共に、生涯を生きてくださいますか?」
答えはもちろん一つしかない。
「喜んで」
その時の光の表情を、奏は一生忘れることはないだろう。
「それでも……もしここにいるのが兄だったとしたら……。あなたはこんなに苦労しなくて済んだはずです」
「もしここにいるのが光様でなくお兄さんだったら、僕はここにいません。だって僕は光様の世話係としてここへ来たんですから」
泣きながら少し拗ねて言うと、光はあっという顔になった。
「あなたと出会えたのは、私の体が不自由なせいでしたね……。生まれて初めて、この体に感謝したくなりました」
すべてを飲み込んで淡く儚く微笑む光に、涙がとめどなく流れ落ちる。
「奏。泣かないで……」
光は恐る恐る腕を伸ばして、泣きじゃくる奏の涙を、細い指で拭った。
奏は頬に伸ばされた光の手の上に、自分の手を重ねた。
「光様は僕を怖がらないでください。もっと僕に触ってください。僕のすべては光様のものです。だから僕を……」
「奏」
光は奏の名を呼んで、奏の言葉を遮った。
「それ以上言わないでください。それは、主である私が言わなければならない言葉です」
光は閉じていた目を開けた。 花が蕾をほどくように、美しい瞳が、開く。
「奏。あなたは私の傍で、私と共に、生涯を生きてくださいますか?」
答えはもちろん一つしかない。
「喜んで」
その時の光の表情を、奏は一生忘れることはないだろう。

