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埋み火
第2章 熾し火
(課長、どういうつもりなのかしら)


 霧子は霧子で手を握られたり抱き寄せられて驚いたが、これくらい賢治のような、にこやかで華やかな男には日常的なのかもしれない。

 しかし、再びケーブルカーで降りて駐車場の車に乗るときまで賢治は霧子の手を離さなかったため、どうしたものか困惑した。

 博之と別れようと思ったものの、いざ他の男にこうして触れられても心がときめいたりはまだしないようだ。




 夜は夜で約束したように舞鶴市内に戻り、カキの有名店に連れて行かれ、霧子は「もうだめ」とおなかをさすって笑うほど生ガキを堪能した。

 別れた夫が全く生ものが食べられない男で、食卓に刺身などを出したことがないため生ガキなど何年も食べていなかったことを軽く話し、「好きなものを相手に気兼ねなくたくさん食べられるなんて、私いま幸せだわ」とつぶやいた。


「なんや、霧ちゃんはそんなにカキ好きやったんかい」

「お刺身とか、何でも好きです。でも、旦那が嫌いだとなかなか自分のためだけに買うわけにもいかないですしね」

「霧ちゃんは真面目やなぁ。俺の嫁は自分の好物をいつもちゃっかり買うてるけどな」

「それは賢治さんが優しいから」

「俺やったら、自分の好物ばっか食って霧ちゃんに我慢させるよりも、霧ちゃんが好きなもの食べて、今みたく幸せそうなのを見てるほうが嬉しいけどな」


 そんなふうに大事にしてくれる男が私にはいつかできるのだろうか、と賢治の妻が霧子は羨ましくなった。

 今は誰に気兼ねもせず一人で好きなものも食べられるが、かわりに毎日誰もいない家に帰り、楽しみは仕事を終えた博之との十分間の電話だけだった。

 自嘲ぎみに霧子はにこにこしている賢治の顔を見て笑った。

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