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埋み火
第2章 熾し火
 車は天橋立がある宮津市に向かって走り出した。

 休みなので交通量も多いが、まぁさほど大渋滞にも巻き込まれず着けるだろう、とナビを見ながら賢治が言う。


「私、舞鶴に天橋立があるんだと思ってました」

「それが、宮津なんよ。まぁ遊びに来てくれた親戚とかには、さも舞鶴でございますって顔で案内するけどな」

「もう、舞鶴支店は長いですか?」

「三年や。もう異動がありそうでいややなぁ、まだここから動きたくないねん」


 天気もよく、風も少ないらしく凪いだ海面がきらきらと輝く海沿いの道を走っていると久しぶりに霧子は楽しい休日を過ごしていると心から思えた。

 博之に会いに行く新幹線の旅は、行きこそ久しぶりに会える嬉しさで胸がときめくものの、そのぶん帰りの寂しさが何倍にも大きくふくれ上がる。

 せっかく東京に行っても観光もほとんどせずに、一緒にホテルで過ごしてせいぜいおいしい店を探してさっと昼を食べるだけだから、あまり東京に出てきた感覚もない。

 賢治の家族の話を聞いてけらけらと笑っているうちに、順調に到着し有料駐車場にもさほど待たずにすぐ停めることができた。

 ここからケーブルカーで山の中腹にある展望台に上ると絶景が見られると賢治が教えてくれた。


「ちょい待って」


 賢治は後部座席から一本の傘を引っ張り出した。


「ちょいデカいんやけど、嫁の日傘でよかったら使ぅて」

「ああ、日傘忘れちゃった」


 寝坊して、慌てて出てくるときに霧子は愛用の日傘をすっかり忘れて家を出てしまった。

 なにせ雨女なので、晴雨兼用の傘は必需品なのにもかかわらず、だ。


「ありがとうございます、でも大丈夫ですよ、日焼け止めをしっかり塗りましたから」

「いや、ね。工藤さんの白い肌が焼けんか心配でさ」

「そんな風に心配してくれるの、今じゃ課長だけです」
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