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埋み火
第2章 熾し火
 何しろ会うのが退職して八年ぶりなので、霧子は賢治といろいろな昔話をした。


「でもさ。関連会社に行かないでも支店に求人はなかったんかな? 送信は正社員じゃないし、給料も安いんじゃないかい?」

「こんなおばさんになったら、もう関連会社しかないですよ」

「工藤さんなら全然いけると俺は思うんやけどなぁ」

「ないです、ないです。それに、銀行に比べると残業もないし、オペしてればいいだけなのは今の私にとってはいい社会復帰のリハビリなんですよ。今日は課長、ご家族は?」

「子供らは部活や。嫁は何か知らんけど、友達と出かけたな。工藤さんを迎えに行く前に、東舞鶴駅まで送ってやったから今日は一日、車も自由に使えるんよ」


 食後に一服をしようと胸ポケットから煙草を取り出した賢治は「おっと。工藤さん、煙草は嫌いやったね」と店の外の灰皿でさっと吸って戻ってきた。

 それから賢治はふたり分の会計を済ませ、半額出すという霧子を店から押し出してまた車に乗ると「工藤さん、彼氏おんの?」と聞いた。

 どう答えたものか一瞬迷ったが、「いないですよ」と笑って答えた。

 今週の月曜まではいた。妻子のある栃木の男だ。

 だが、もう会わないことにしたのだから嘘はついていない。


「これから、婚活開始なんですよ」

「いやぁ。工藤さん可愛いし。それにバツイチってモテるやろ?」

「そうですか? 私、どう見ても自分が事故物件だと思いますよ」

「そんな風に思わんでええよ。工藤さんは素敵や」


 お前はいい女だよ、と言ってくれた博之の顔をまた思い出してしまった。

 そんなにいい女だとしたら、なぜこんな苦しい恋をして自分は泣いているのだろう。
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