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埋み火
第2章 熾し火
 車が走り出すと賢治が運転しながら人差し指を上に向けた。


「ほら、晴れたやろ」

「ですね、でもちょっと暑いですよ」

「ほんまやね、ごめんごめん」


 賢治が昼食に案内してくれた蕎麦屋は店がまえこそ古いものの味がよく、聞けば客回りのときに見つけてよく昼に利用しているという話だった。

 営業マンが通う店はだいたいはずれがないので、霧子たちが入ったすぐ後からは店の入口で待つ客の列ができはじめていた。


(ひろに写真、おくろ)


 頼んだせいろ蕎麦が来ると、いつものように霧子はスマホを取り出してシャッターを押した。


(あっ)


 もう連絡なんかしないと決めていたのに、こうして美味しいものの写真を撮ると博之に見せる癖が抜けていなかった。


「やっぱ、女の子はご飯を撮るの好きやねぇ」

「そんな、もう女の『子』でもないですよ」

「工藤さんは僕にとってはまだ十年前のまんまなんよ、だから女の『子』やで」

「じゃあまだまだ私、新人ですね。為替事故を起こしてたころの」

「まだ覚えとるんかい」

「部長にドヤされましたから、あれは忘れられません」


 博之に蕎麦の写真を送ったところで土日はろくに返事も来ないからとスマホをバッグにしまった。

 博之は土日には家族で近所のショッピングモールによく行くらしいが、会っているときはいつもスマホをいじっているくせに普段はメールすらくれない。

 そう霧子が不満を言っても「返事はしないけど読んでるぞ」「俺はそんなにマメじゃない」と博之はそっけなく、土日の休みには霧子をほぼ完全にほったらかしていた。
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