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埋み火
第2章 熾し火
「もう少し話したい。何で駐車場からすぐ出ちゃうの? 落ち着いた場所で、少しでいいから、ちゃんと声が聴きたいの」


 すぐに返事はなかった。


「運転しながら、じゃなくて、ちゃんと私と話す時間もとってくれないの?」

「疲れたんだ。早く帰って寝たいんだよ」

「……そっか」


 聞き分けのない女になるのは、自分でもいやだ。

 いい歳のくせにみっともないと自分を罵りたくなる。

 だが、こうも自由に会えず、おまけに声を聴くことすらできない日が続いていると、この心の渇きをどう癒せばいいのかもわからなくて苦しい。


「俺はこんなやつなんだ。こんなんでもいいのか、考えろよ」


 霧子は博之に突き放された気がして、こらえていた涙がこぼれた。

 久しぶりの電話なのに、もう少し声を聴いていたかった。

 旧友に会えたことや、週末にドライブで舞鶴に行くこと、好物のカキを食べることを話そうと思ったが、言葉が詰まって何も言えなかった。


「ちゃんと割り切れ」

「わかった。ごめんなさい、わがまま言って」

「うん」

「もう、電話はいらないよ。疲れてるのにしゃべりながら運転して、事故ったら困るもんね」

「……別に、運転は大丈夫だぞ?」

「いいの。わがまま言わないって決めたし、邪魔したくないから。じゃ、おやすみ。……さよなら」


 電話を切るまでこらえようと思ったが、最後は涙で声にならないまま通話終了のボタンを押し霧子は机に突っ伏して嗚咽を漏らした。


(やっぱり、どうせたまに東京に呼びつけて抱くだけの女だったんだ。利用されてるだけだったんだ。だから「好き」って言ってくれないんだ。……愛情を求めちゃ、いけなかったんだ)


 博之が大事なのは自分とその家族だけだ。霧子のことはあくまで外に作った女というだけなのだろう。

 そんな男を愛してしまった自分が悪いのだ。
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