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埋み火
第2章 熾し火
 はたして土日が明け、出勤して月曜の朝に自分の端末を立ち上げるとメールが一通来ていた。

 もしかして、と思ったとおり差出人は舞鶴支店の荒木賢治課長となっていて、本文は誰かが読んでも差しさわりのないもので、末尾の署名欄に携帯番号が添えてあった。


 土日もまた博之からずっと連絡のないままワンルームの部屋でぼんやり過ごしていた霧子は、その番号を控えるとこっそりトイレでショートメッセージを送ってみた。


『工藤です、お久しぶりです。メールありがとうございました』


 それだけの文面だったが、昼に見てみれば返信があり、夕方の終業後には霧子は外回り中の賢治からの電話を受けながら地下鉄の駅へと歩いていた。


「いやぁ、工藤さんが烏丸の送信集中におるとか驚いたよ! 西川さんから研修のときに聞いてさぁ」

「いろいろありまして」

「そかそか、それにしても何年ぶりやろね、ほんま嬉しかったよ」


 社交辞令やお世辞でもなく本当に嬉しそうな声だった。

 賢治はこうして人の気持ちにするっと入っていく男だった。

 銀行員に求められる緻密さ、正確さをさほど誇るわけでもないし世渡り上手とまではいかないが、人なつっこい上に表情や口調で取引先が心を許しやすかった。

 それに比べれば自分は人生経験も浅く、わりと表情も硬いなと霧子は思う。


「工藤さん、今度の週末は暇かい?」

「え、はい」

「詳しくは聞いてへんけど何や大変なことがいっぱいあったみたいやし、よかったら気晴らしに舞鶴の海でも見にこんかい? ちょっとそっちからは遠いやろけど、駅まで来てくれたら車出すよ」

 海、と言われて霧子の心はここのところ沈んでいたのが少しだけ躍った。

 小さいころは海のそばに住んでいたが、大学進学で京都に来てそこで知り合い結婚した相手の実家は奈良の山奥で、まったく閉鎖的な空間にずっといたからだ。
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