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埋み火
第2章 熾し火

「せや。私な、今度の月曜にスキルアップ研修が本店であるんやけど、たぶん課長も来はるのよ。もし課長がいはったら、霧子のこと話してええかな?」
「いや、それはええけど……」
「もちろん他の人には聞こえないようにするさかい」
さっきよりもいたずらめいた顔で遥は笑った。
「ええやないの、霧子はオトコ関係に真面目すぎるのよ。つきあってもいない人と連絡しあうぐらい、別に罪でもなんでもないんやから。これからちゃんといい恋愛して再婚する前に、少しいろんな男の人と接触して免疫持ったほうがええよ」
「せやけど……」
「銀行員は転勤あるけど、やっぱ安定してるから再婚相手にはええと思うよ。課長に支店の後輩でも紹介してもらい。なんかね、霧子っておっとりしてるからやっぱり心配なんやわ。……気、悪うしたらごめんね、また悪い男に騙されたらって心配になってもうてん」
言われてみれば、嫉妬深い夫のせいで霧子は仕事をやめさせられて以来、殆ど外部と接触しないままこの年齢になっていた。
(悪い男、か。ひろもその部類なのかな)
離婚したときも周囲から「今は心が弱っていて、目が曇っているからすぐに再婚するのはだめだ」と言われ憤慨したものの、じっさい妻子持ちの男に引っかかってずるずる関係を続けているのだから否定できない。
(悪い男よねぇ、隠れて嫁より若い女にあんないやらしいことさせて)
遥と別れ、トイレで歯を磨いていると、また博之の顔を思い出して霧子は少しだけ個室に入って泣いた。
「いや、それはええけど……」
「もちろん他の人には聞こえないようにするさかい」
さっきよりもいたずらめいた顔で遥は笑った。
「ええやないの、霧子はオトコ関係に真面目すぎるのよ。つきあってもいない人と連絡しあうぐらい、別に罪でもなんでもないんやから。これからちゃんといい恋愛して再婚する前に、少しいろんな男の人と接触して免疫持ったほうがええよ」
「せやけど……」
「銀行員は転勤あるけど、やっぱ安定してるから再婚相手にはええと思うよ。課長に支店の後輩でも紹介してもらい。なんかね、霧子っておっとりしてるからやっぱり心配なんやわ。……気、悪うしたらごめんね、また悪い男に騙されたらって心配になってもうてん」
言われてみれば、嫉妬深い夫のせいで霧子は仕事をやめさせられて以来、殆ど外部と接触しないままこの年齢になっていた。
(悪い男、か。ひろもその部類なのかな)
離婚したときも周囲から「今は心が弱っていて、目が曇っているからすぐに再婚するのはだめだ」と言われ憤慨したものの、じっさい妻子持ちの男に引っかかってずるずる関係を続けているのだから否定できない。
(悪い男よねぇ、隠れて嫁より若い女にあんないやらしいことさせて)
遥と別れ、トイレで歯を磨いていると、また博之の顔を思い出して霧子は少しだけ個室に入って泣いた。

