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埋み火
第2章 熾し火
 ぼんやりと博之がベッドでうたたねをしていたときの顔を思い出しながら昼を食べに食堂へ行こうと霧子がエレベーターに乗り込んだところ、先に乗っていた女子行員が素っ頓狂な声をあげた。


「霧子!」

「遥……?」

「やだ、今ここで働いてるん?」

「うん! ……あ、すみません」


 周囲の行員たちがふたりを見たのでエレベーターが食堂のある七階に着くまで首をすくめて黙っていたが、調理の音や食器のぶつかる音とざわめきに満ちた食堂に入るなりお互いに「久しぶり」と顔を見合わせた。

 西川遥は霧子の同期入行組で同い年だ。

 明るくそつのない性格で、トラブルが発生しても霧子のように慌てることなく冷静に後処理ができる。

 霧子のネームカードを見て苗字が旧姓の「工藤」に戻っているので遥はだいたいの事情は察したようだ。


「やっぱりか。霧子のダンナ、ちょっと怪しかったもんなあ」

「怪しいって何や」

「霧子、新婚で幸せなはずやのに、いつもめっちゃダンナに気遣ってたやろ。顔色、窺ってる感じでさぁ。疲れていそうやなって、ダンナといるとこ見るたんびに思っとった」

「何も言えへん、せやねん」


 純粋に京都生まれの遥と夢中で話していると、引っ張られて霧子も支店で使っていた京都弁に戻った。

 北の生まれの霧子はもともと関西弁をさほど使ってはおらず、博之と話す際は標準語に戻るが、気を許せる地元の相手といるときは同調するかのように戻ってしまう。


「伏見からいつ異動したん?」

「二年くらい前かな。支店から研修部に異動になって指導係になったからこのビルにきてん」

「はぁー、けっこう出世したんやね」

「たまたまよ、運がよかっただけやな」



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