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埋み火
第1章 忍び火

「この前言ってたスカートと靴、それだろ」
歩きながら博之が霧子をしげしげと見た。
「そうよ」
「似合ってるな、可愛いよ」
まっすぐ目を見て「可愛い」と言われたので霧子は恥ずかしさに目をそらす。
「ほら、また目を合わせない」
「だって……」
「お前、ちゃんと俺の顔覚えて帰れよな」
初めて会った日の翌日に冗談で「あなたの顔、覚えてないの」と言ったことを博之は未だ根に持っているのだが、じっさい霧子は恥ずかしがってあまり博之と目を合わせないことが多いのでそう思われてもしかたがない。
別れた夫によって世間から隔絶されていた霧子は十年の間に、好きな男に対する免疫すら消えていた。
歩きながら博之が霧子をしげしげと見た。
「そうよ」
「似合ってるな、可愛いよ」
まっすぐ目を見て「可愛い」と言われたので霧子は恥ずかしさに目をそらす。
「ほら、また目を合わせない」
「だって……」
「お前、ちゃんと俺の顔覚えて帰れよな」
初めて会った日の翌日に冗談で「あなたの顔、覚えてないの」と言ったことを博之は未だ根に持っているのだが、じっさい霧子は恥ずかしがってあまり博之と目を合わせないことが多いのでそう思われてもしかたがない。
別れた夫によって世間から隔絶されていた霧子は十年の間に、好きな男に対する免疫すら消えていた。

