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埋み火
第1章 忍び火
 ベッドに入り、目をつぶって休む博之の顔を見ながら霧子は物思いにふける。


(私のこと、どう思ってるのかしら)


 霧子はいつもセックスのとき、博之に「好き」と言う。だが博之は何も言わない。


(好き、だなんて思ってないのかな。体だけかしら)


 こういう性格の男だし、わざわざ旅費を出して呼ぶ遠方の女の体だけが目的ではないとわかってはいたが、それでも女なのだし言葉に出して気持ちは伝えてほしい。

 だが、霧子にできることといえばその「からだ」での誘惑くらいだ。


「ひろ。しよっか」

「え?」


 口の中もビールの水分で潤ったし、汗も引いてきたので霧子はシーツから出て、博之の下腹部へと顔を近づける。

 射精のあとで小さくすぼまった赤黒いものは力なくだらりと垂れていたが、見ればまだ先端から液が出続けている。

 年齢的なものなのかだいたいの男がそうなのか、博之は射精後しばらくは気が付くとシーツに精液の残りをべっとりつけてしまったりする。

 ナマコのように柔らかくしぼんでしまっているそれを丸ごと口に含むと霧子は口内を蠕動させ、全体に強く刺激を与えてやった。


「んっ……! ああ、あっ、だめだ、敏感になってる……」


 そのようにだらっとしたものでも、あふれる精液の残りを霧子はしっかり味わった。

 博之が言うように一度イったあとは敏感になっているので、逆を言うと優しく吸ってやらないと痛がる。


(ふふ、美味しいわ。どう? あなたの奥さん、ここまであなたにしてくれる?)


 自分でもそんな醜い嫉妬を抱きながらするのはいやだと思う。

 だが、博之のことがそれだけ好きで、彼が家に帰っていく瞬間の苦しさはどうしようもない。

 夢中で舌を動かしていると、柔らかいナマコだったものがたちまち先刻のような猛々しさを蘇らせ体積を増した。
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