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埋み火
第1章 忍び火
 霧子が体を小さく震わせたので肩までシーツに包んで温めてやると、自分は裸のままテーブルに置いてあるペットボトルの緑茶をがぶがぶと飲んだ。

 汗がひどい。


「いつも早くてごめんな」

「ううん、今日、長かったよ。気にしなくていいのに」

「気にするよ」

「気遣って、途中でやめなくていいよ」


 今ではやっと言わなくなったが、最初は必ずした後は「ねぇ、旦那より早い?」と聞いていたので霧子が呆れていた。

 自信がないぶん、今までの女性にもしてきたが申し訳ないのできちんと前戯はしている。

 それも真面目な性格からいつも同じ手順になりがちで、しかしそれをどうにか変えようなどとは霧子に出会うまで「早いんだからしかたない」と改善することすらも思いつかなかった。

 だが霧子は博之のそういったすべてが愛おしいらしく、「気持ちいいから気にならない」といつも事後は早漏を恥じる博之の腕の中に嬉しそうに収まる。


「そっか、じゃあ今度からそのままイっちゃうわ」

「いいよ」


 この後、汗が冷えるだろうと予想してエアコンの設定温度を二度ほど上げてから博之もベッドに戻る。

 射精のあとのけだるさと暑さから、シーツはかぶらずに霧子の横に寝ころんだ。

 霧子はシーツの中からちょこっと手を出すと、夕方になって髭ののびはじめた博之の頬に触れて目をつぶった。


「別に。ちょっとくらい早くてもいいから、私はひろといっぱいしたいの」


 それを聞くと博之はけだるさも吹き飛び、「そうか」と霧子をシーツ越しに力をこめて抱いた。
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