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埋み火
第1章 忍び火
 もちろん、霧子が激しく博之を求めるのは次に会えるのがいつかもわからなければ、博之の妻に露呈してすべてが終わるかもしれないからだ。

 博之は力を入れて霧子の腰を抱き、霧子も博之にすがりついて唇を吸い続ける。

 唇の皮膚が薄く荒れやすい霧子は十代のころからリップクリームや口紅選びに気を遣っていたが、博之と会うようになってからはやや値段の張る、エッセンシャルオイルがふんだんに使われたものを選んでいる。

 上野で「きれいな唇だと思った」と言われたので、そのパーツを生かそうと思ったらそれが当たったわけだ。

 ローヤルゼリーや精油の入ったグロスをたっぷり塗ったツヤのある唇は素の血色もよく、博之はキスだけで身も心も蕩けそうになると言う。

 そして霧子もまた、セックスの最中には博之のいきり立つ肉槍に突き上げられながら唇を吸われているといつもどうにかなってしまいそうな快感に襲われている。

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