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埋み火
第1章 忍び火
『そうだったの? ひろ、誰も理解してくれないって言ってたけど、ちゃんと支えてくれる人がいたんじゃない』


 霧子は電話の向こうで泣いていた。

 二人は互いに「きり」「ひろ」と呼びあっていた。

 自由になり、顔を知らなかったとはいえやっと好きになれた男と東京で出会えた日に崖から突き落とされたようなものだ。


『やっぱり、ひろのこと今は嫌いになれないよ。来月、会おうね』

『お前がいいならいいけど。お前が可愛いから俺、何もしないでいられるかわかんないぞ』

『私はいいよ』

『わかった。じゃあ、俺はお前がちゃんといい男を見つけるまでの中継ぎだ』


 いきなりのデートで抱くところまでは……と思ったものの、霧子のわりと低めで落ち着いた声を聴いているとそれが妙に下半身を刺激した。

(この声が、男に抱かれるとどうなるんだろう)


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