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鬼ヶ瀬塚村
第8章 弘子

『さぁて、お味はどうかしらね?』
弘子さんが見守る中、僕は抹茶の入った湯飲みを持ち上げた。茶道はからっきしわからないけれど、隣の真理子さんを真似てゆっくり湯飲みを回した。
そっと口をつけ、口内に流し込む。とても苦くて、同時に深く甘い不思議な味だった。
『どうかしら?』
弘子さんが小首をかしげた。
『とても不思議な味です』
僕が答えると弘子さんは少し驚いた顔をして、再び柔らかく微笑んだ。
『あなたはとても正直な人ね、嘘をつける人じゃないみたい』
弘子さんは更に続けた。
『この私の部屋には多くの方が来るわ。ほとんどが仕事の事情で私に会いに来るのだけれど…私は決まって彼らにお抹茶を出すの』
『そうなんですか…』
『ええ、大抵の人は飲んだ事がないみたい。特に若い人はね…でもね、とっても面白いのよ?』
『何が面白いんですか?』
弘子さんは右手を顎に添えてふふふッと笑った。
『みんな初めて飲むのに私が味を訊ねると"美味しい"と言うのよ?可笑しくなくて?どうして知らない味を美味しいと判断出来るのかしら?お抹茶は苦くて初めて口にする人には合わないわ…だから美味しくないと感じたり、あなたみたいな答えが私は正解だと思うの』
弘子さんは悪戯っ子のように言う。
弘子さんが見守る中、僕は抹茶の入った湯飲みを持ち上げた。茶道はからっきしわからないけれど、隣の真理子さんを真似てゆっくり湯飲みを回した。
そっと口をつけ、口内に流し込む。とても苦くて、同時に深く甘い不思議な味だった。
『どうかしら?』
弘子さんが小首をかしげた。
『とても不思議な味です』
僕が答えると弘子さんは少し驚いた顔をして、再び柔らかく微笑んだ。
『あなたはとても正直な人ね、嘘をつける人じゃないみたい』
弘子さんは更に続けた。
『この私の部屋には多くの方が来るわ。ほとんどが仕事の事情で私に会いに来るのだけれど…私は決まって彼らにお抹茶を出すの』
『そうなんですか…』
『ええ、大抵の人は飲んだ事がないみたい。特に若い人はね…でもね、とっても面白いのよ?』
『何が面白いんですか?』
弘子さんは右手を顎に添えてふふふッと笑った。
『みんな初めて飲むのに私が味を訊ねると"美味しい"と言うのよ?可笑しくなくて?どうして知らない味を美味しいと判断出来るのかしら?お抹茶は苦くて初めて口にする人には合わないわ…だから美味しくないと感じたり、あなたみたいな答えが私は正解だと思うの』
弘子さんは悪戯っ子のように言う。

