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鬼ヶ瀬塚村
第8章 弘子

『彼だけ先に東京へ帰って貰っちゃ駄目かな?』
『まぁ、どうして?』
僕は真理子さんの方を見た。まさか真理子さんがそんな風に考えているとは思わなかったからだ。
『………』
弘子さんの問いに真理子さんは黙り込んでしまう。
『真理子、あなた1人では決められる事ではないでしょう?信人さん、あなたはそうしたいの?』
『え、僕ですか?』
突然降って落ちてきた問いに僕は困ってしまった。
そりゃ出発する前は何かあれば先に東京へ帰ってしまえばいい…なんて思っていたけれど、到着したその晩にそれを訊かれるとなんだか寂しい気もする。
けれど、同時にこの村の独特な空気やそれに触れると別人になる真理子さんに不安は感じていた。
僕は弘子さんを真っ直ぐ見つめ
『…そうですね、僕は…真理子さんがそう言うならそうします』
と言った。
真理子さんがその言葉に僕を見る。
大きな目玉の表面が濡れている。
真理子さんは少し泣きそうになっていた。
『あらあら、若い頃の宗二さんみたい』
弘子さんは右手を顎に軽く添えながらクスクスと笑った。
『わかっています。優子の事でしょう?あの子には私から言っておきますから』
『お母さん…』
『真理子、私はあなたの母親なんだから。あなたが考えている事はわかっているつもりよ?』
『まぁ、どうして?』
僕は真理子さんの方を見た。まさか真理子さんがそんな風に考えているとは思わなかったからだ。
『………』
弘子さんの問いに真理子さんは黙り込んでしまう。
『真理子、あなた1人では決められる事ではないでしょう?信人さん、あなたはそうしたいの?』
『え、僕ですか?』
突然降って落ちてきた問いに僕は困ってしまった。
そりゃ出発する前は何かあれば先に東京へ帰ってしまえばいい…なんて思っていたけれど、到着したその晩にそれを訊かれるとなんだか寂しい気もする。
けれど、同時にこの村の独特な空気やそれに触れると別人になる真理子さんに不安は感じていた。
僕は弘子さんを真っ直ぐ見つめ
『…そうですね、僕は…真理子さんがそう言うならそうします』
と言った。
真理子さんがその言葉に僕を見る。
大きな目玉の表面が濡れている。
真理子さんは少し泣きそうになっていた。
『あらあら、若い頃の宗二さんみたい』
弘子さんは右手を顎に軽く添えながらクスクスと笑った。
『わかっています。優子の事でしょう?あの子には私から言っておきますから』
『お母さん…』
『真理子、私はあなたの母親なんだから。あなたが考えている事はわかっているつもりよ?』

