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鬼ヶ瀬塚村
第18章 地獄道

『真理子さん…カヤさんは…ひょっとして』
僕はふとカヤさんの痴呆を思い出した。
居間でみんなと過ごす時は本当にちっとも動かない。ただ、大人しくジッとしている彼女…だけど、あれは間違いなくフリだ。
『あら?気付いてたんだ?そうだよ、カヤばぁちゃん本当はボケてないわよ?』
『やっぱり』
『まぁ、少なくともおじいちゃんは気付いてないみたいだけど。気付いてる人は気付いてるのかなぁ?私だけかなって思ってたわ』
『いや、見たんだよ。カヤさんが背筋を真っ直ぐにしてテレビに向かってハッキリ独り言を言ってたんだ』
『あら、随分油断してたのね。カヤばぁちゃん、おじいちゃんの事大好きだからねぇ』
『…やっぱりか』
僕は気付いていた。宗二さんが村長の夫は猪神となり妻に食べられる運命なのだと教えてくれた時から。
カヤさんは痴呆を患ったフリをし、吾郎さんを殺さなかったのだ。
愛する夫を殺めたくない為に。
『まぁ、お陰様であの頑固なおじいちゃんは健在だけど……色々問題は山のようにあるわ。まだ掟に従順な村人連中がやっぱり一部いてね、ボケてようがボケてまいがカヤばぁちゃんに食わせろってうるさいのよ』
『そりゃひどいな』
『でしょー?だから私がボケたフリしたとしても、ノブ、あんた危ないかもしれないわよ?』
真理子さんはクスクス笑って僕を見上げ続けていた。アイラインが涙でくすんでいたけど、とても可愛い顔だった。
僕はふとカヤさんの痴呆を思い出した。
居間でみんなと過ごす時は本当にちっとも動かない。ただ、大人しくジッとしている彼女…だけど、あれは間違いなくフリだ。
『あら?気付いてたんだ?そうだよ、カヤばぁちゃん本当はボケてないわよ?』
『やっぱり』
『まぁ、少なくともおじいちゃんは気付いてないみたいだけど。気付いてる人は気付いてるのかなぁ?私だけかなって思ってたわ』
『いや、見たんだよ。カヤさんが背筋を真っ直ぐにしてテレビに向かってハッキリ独り言を言ってたんだ』
『あら、随分油断してたのね。カヤばぁちゃん、おじいちゃんの事大好きだからねぇ』
『…やっぱりか』
僕は気付いていた。宗二さんが村長の夫は猪神となり妻に食べられる運命なのだと教えてくれた時から。
カヤさんは痴呆を患ったフリをし、吾郎さんを殺さなかったのだ。
愛する夫を殺めたくない為に。
『まぁ、お陰様であの頑固なおじいちゃんは健在だけど……色々問題は山のようにあるわ。まだ掟に従順な村人連中がやっぱり一部いてね、ボケてようがボケてまいがカヤばぁちゃんに食わせろってうるさいのよ』
『そりゃひどいな』
『でしょー?だから私がボケたフリしたとしても、ノブ、あんた危ないかもしれないわよ?』
真理子さんはクスクス笑って僕を見上げ続けていた。アイラインが涙でくすんでいたけど、とても可愛い顔だった。

