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鬼ヶ瀬塚村
第18章 地獄道
『真理子さんは…人間の肉を食べ続けるの?』

不意に訊ねた。
穏やかな沈黙の後、真理子さんが呟いた。

『そりゃあね、仕事だもの…それに、解体だってするし…』

『解体…』

僕は再びウッと込み上げるものを押さえ込んだ。
何か酸っぱいものが這い上がって来たのだ。

『優子は退屈がって嫌う仕事ね、いつも誰かに押し付けて遊んでるわ』

『…そうなんだ』

再び沈黙が訪れた。左手の柔らかな感触だけが僕を感覚としてこの場に繋ぎ止めている。

『どうして人間は人間を殺すんだろうね?』

僕は沈黙を破り呟いた。

『憎んでいるからじゃないわよ…悲しかったのよ、きっと。わかって欲しかったのよ。けど、受け入れてくれなかったから、殺すんじゃないかなぁ?』

『この村にはそういう人達が来るの?』

『そ、みんなあっさり殺しておいて…やれ仕事がやれ家族がやれ恋人がって言うのよ』

仕事…僕は再びズキッと胸に痛みを感じた。

『ごめんね…真理子さん』

『いいのよ』

真理子さんは何故僕が謝ったのか理解していたのだろうか?

相変わらずの飄々としたテンポで静かに答えてくれた。
それが痛々しくて、頼りなくて、か細くて、僕はまた泣いた。

『ノブは泣き虫だなぁ』

真理子さんが笑った。
僕は泣いた。
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