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優しいヒトに虐められてます。
第7章 おねだり
トウキの携帯が鳴った。
彼は事務所の奥の部屋にこもり
必要最低限の明かりだけを点けて作業していた。
携帯を手に取る。

向こうから電話してくるなんて、珍しいな。
「もしもし?」
『あ、もしもし……斎藤春です……』
「うん、わかってるけど……
どうかしたの?」
『あ、あの、ごめんなさい……』
「え……」
トウキの顔色が瞬時に青ざめる。
胸に不安がくすぶる。

「何か……あった……?」
『私、本当はもう、勝ち負けなんて
とっくにどうでもよかったんです
ごめんなさい……

早く仲直りしたかったんですけど
あの時、感情的になっていろいろ言っちゃったから
引くに引けなくて……
ちゃんと大津川さんに伝わるように言っていれば
こんなことにはならなかったのに……』

胸が締め付けられるような感覚。
トウキは今まで一度たりとも、ハルに
こんなことを言ってほしいと思ったことはない。

今ハルにこんなことを言わせている自分に
腹が立つ。憎らしいくらいに。
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