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王子様は、きらきら星の住人
第1章 壊れたきらきら星
足元から立ちのぼる生暖かい不気味な感覚に身震いする。
目の前にある鍵盤が、全く別の物体に見えた。
今、何処にいて、何をしようとしているのか、わからなくなりそうだ。
客席がざわめき始める。いつまで経っても演奏が始まらないからだーー
「真由ちゃん!あなたの好きなキラキラ星でしょー!頑張って!」
母の必死な励ましが会場じゅうに響き、かえって真由を居心地悪くさせた。
弾かなくちゃ。キラキラ星を、弾かなくちゃーー
真由は、鉛のように重たくなった両手を鍵盤の上に置き、先生の顔を見る。
先生はお面のような笑顔で頷き、タクトを大きく振った。
最初の音を鳴らした瞬間、真由の身体中の血の気が引いた。
先生が大きく目を見開き上半身を傾けタクトを振りながら、真由の方へ囁く。
「真由さん、そのまま続けて」
続けるどころか、真由は全く動けないでいた。
間違えたのだ。初っぱなから。
始まりのフレーズを、一オクターブ高い音で鳴らしてしまった。
「あ~あ、やっちゃったよ、やっぱり尻のでっかい女は頭の中が空っぽだよな~」
背後から、ジョーの冷やかしが聴こえる。

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