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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第21章 まもなく境界線に、電車が参ります
 「……」
「キュウッ」
それを見上げていた神依は、批難するような子龍の声にようやく目線をずらし、固い笑みを浮かべて応える。
「危ないのは……なんとなく分かってる。でも今は、こっちに行かなきゃいけない感じがするの。……多分」
 誘(いざな)われている。
 それどころかこの先に誰が待っているのか、自分は知っている気がする。そしてそれがどれだけ正しいかも知っている。
「……」
頭に浮かぶのは、焦がれた男とよく似た声で紡がれた……憎悪と愛情の言葉。そしてそれが日嗣と瓜二つの姿を取っているなら、おそらく──
(ううん……間違いない)
その認識は神依の中で息を潜めていた恐怖を呼び醒まし、肉体の動きを封じる。脳裏にちらついてじっとこちらを眺めている幻想の影に、神依はそれを振り払うように頭を振り、未だに騒ぐ子龍を両手で抱いてその闇へと歩みを進める。
 子龍は押さえ込まれてしまったことに抗議の声を上げるが、ふと自分を抱く手が汗ばんでいることに気付いてようやく理解する。彼女も怖くて、すがるように自分を抱き締めていて──それでも引き返す気はもう無いのだ。
 また同じように自分も、もうそれから逃げ出すことは許されない。この少女を護るなら、少女とずっと一緒にいなければならなかった。
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