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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第21章 まもなく境界線に、電車が参ります
纏う衣は自身の記憶を頼るなら、伍名の色と着こなし。長い手足を包むたっぷりとした灰赤の衣の上には、種々の紐や布飾りがゆったりと垂らされていた。
その緩やかな衣の背後で、床に落ちていた闇がさわりと蠢く。それは男の動きに倣い、潮が引くように。気のせいでもなく目を凝らして見れば、それらは蜘蛛の群れだった。しかも一匹一匹が自分の手のひら程もありそうな、巨大な蜘蛛。淡島の我が家に住まう蜘蛛神とも異なる、異形とも思えるほどに巨大な腹と太く長い脚。それですぐに、この男も同じものなのではないかと神依は察した。
「……っ」
それが、自分と子龍を取り囲んでいる。
一体なにが起きたのか、いやがおうにも頭は良くない事態を思い浮かべてしまい、痛い程に肌が粟立った。しかし男は何故か神依に頭を垂れると、ゆっくりと口を開く。
「……何処(いずこ)かより流れ来たる、稀なる女(め)の子の神と見奉る」
「え?」
「御身には懐かしき、我が主神(あるじのかみ)の名残が……。然るに直に御前にて、口を利くのも憚られども……我が一族の者共、名と身を落とされ世と時を違えてなお、我が主への忠誠を忘れたことはございませぬ。貴女様もまた、世と時を違えれば或いは──」
「ま、待って……下さい」
その緩やかな衣の背後で、床に落ちていた闇がさわりと蠢く。それは男の動きに倣い、潮が引くように。気のせいでもなく目を凝らして見れば、それらは蜘蛛の群れだった。しかも一匹一匹が自分の手のひら程もありそうな、巨大な蜘蛛。淡島の我が家に住まう蜘蛛神とも異なる、異形とも思えるほどに巨大な腹と太く長い脚。それですぐに、この男も同じものなのではないかと神依は察した。
「……っ」
それが、自分と子龍を取り囲んでいる。
一体なにが起きたのか、いやがおうにも頭は良くない事態を思い浮かべてしまい、痛い程に肌が粟立った。しかし男は何故か神依に頭を垂れると、ゆっくりと口を開く。
「……何処(いずこ)かより流れ来たる、稀なる女(め)の子の神と見奉る」
「え?」
「御身には懐かしき、我が主神(あるじのかみ)の名残が……。然るに直に御前にて、口を利くのも憚られども……我が一族の者共、名と身を落とされ世と時を違えてなお、我が主への忠誠を忘れたことはございませぬ。貴女様もまた、世と時を違えれば或いは──」
「ま、待って……下さい」

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